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転生したら小田氏治の家臣だったので、滅亡の運命を変えます!  作者: 社長
第一部

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78話 佐竹戦その16

 一秒、一秒。


 その一瞬が何十秒にも、何分にも感じられる。


 俺は駆けていた。


 槍を振るい、敵を蹴り飛ばし、ひたすらに前へと進む。


 目指すは本陣、佐竹義篤の首ただ一つ。


 俺はただそれを目指し、ひたすら駆けていた。


「どけぇぇぇ!!」


 目の前に立ち塞がった佐竹兵へ、槍を突き出す。


 穂先が敵兵の胴を貫く。


「がっ……!」


 敵兵が倒れる。


 だが、その後ろからさらに新たな敵が現れる。


「菅谷政貞を止めろ!」


「殿へ近付けるな!」


 俺達が義篤を狙っていることを、佐竹の兵達も理解したのだろう。


 前へ進めば進むほど、敵の抵抗は激しくなっていく。


 槍、刀、矢。


 あらゆるものが俺達へ向けられていた。


「政貞、右!」


「分かってる!」


 葵の声に反応し、右から振り下ろされた刀を槍で受け止める。


 ガキィン!!


 火花が散る。


 相手の力を受け流し、俺はそのまま槍の石突きを敵兵の顔面へ叩き込んだ。


「ぐあっ!?」


 敵兵が倒れる。


 その瞬間、葵が俺の前へ躍り出た。


「邪魔!」


 葵の刀が閃く。


 一人、二人、俺達へ迫っていた佐竹兵が、次々と地面へ崩れ落ちる。


 迷いのない太刀筋だった。


 葵は息を荒げながらも、俺の隣へ戻ってくる。


「大丈夫?」


「ああ」


「無茶しないでよ」


「葵こそな」


「私は大丈夫」


 そう言って笑った葵の頬には、いつの間にか血が付いていた。


 自分の血なのか敵の血なのか、それはもう分からない。


 だが、それでも俺達は止まらない。


「政貞様!」


 後方から勘助殿の声が響く。


「左から敵が回り込んでおります! 予備兵で抑えます!」


「頼んだ!」


 勘助殿と共に走る兵達が、左から迫る佐竹兵へぶつかっていく。


「ここは通さぬ!」


「政貞様を行かせろ!」


 兵達の叫び、槍がぶつかる音、悲鳴。


 背後では、俺達のために多くの者達が戦っている。


 無駄には出来ない。


 絶対に、義篤の元まで辿り着く。


 俺はさらに前へ進んだ。


 そして敵兵の隙間から———


 見えた、ついに見えた。


 佐竹の大旗。


 その下にいる、一人の男。


 周囲を重臣達に囲まれながら、馬上で戦場を見据えている。


 佐竹義篤。


「見つけた……!」


 俺は思わず声を漏らした。


 あの男を止めれば、佐竹の進撃は止まる。


 小田は生き残る。


 三平太が繋いでくれた命を、皆で守ろうとしている未来を、俺達は掴むことが出来る。


「政貞!」


 葵が俺の名を呼ぶ。


「ああ!」


 俺は槍を握り直す。


 義篤との距離は、あと僅か。


 だがその前には、佐竹の重臣達と、旗本の精鋭達が立ち塞がっていた。


「菅谷政貞」


 一人の武将が、刀を抜きながら前へ出る。


「ここから先へは、一歩たりとも進ませぬ」


 その背後には佐竹義篤。


 そして俺達の未来を阻む、最後の壁。


「なら」


 俺は槍を構えた。


「ぶち抜くだけだ」


 俺は槍を構え、立ちはだかる精鋭達へと攻めかかった。


「皆の者、かかれッ!!!」


「「おおおォッ!!!」」


 鬨の声を上げ、俺に続き兵達は前へ前へと攻めかかる。


 以下の続きです。


 鬨の声を上げ、俺に続き兵達は前へ前へと攻めかかる。


「菅谷を止めろ!」


「殿を守れ!!」


 佐竹の旗本達も、負けじと叫びを上げた。


 さすがは義篤の傍に控える精鋭達。


 これまで戦ってきた兵とは、明らかに動きが違う。


 俺達の槍を恐れず。


 仲間が倒れても怯まず。


 ただ主君を守るためだけに、前へ出てくる。


「っ……!」


 俺は突き出された槍を横へ弾く。


 だが。


 その隙を狙い、左から刀が振り下ろされた。


「政貞!」


 葵の声。


 ガキィン!!


 葵が俺の前へ滑り込み、その刀を受け止める。


「させない!」


 葵は敵の刀を押し返すと、一歩踏み込んだ。


 そして敵兵の胴へ、刀を横から薙ぎ払う。


「ぐあっ……!」


 敵兵が倒れる。


 だが、まだ終わらない。


 今度は二人。


 いや、三人の旗本が、俺達を囲むように前へ出てきた。


「ここで終わりだ、菅谷政貞」


 一人の男が言う。


 長い槍を構え、俺の首を真っ直ぐに狙っていた。


「殿へは行かせぬ」


「お前達も、主君のために戦っているんだな」


「ああ」


「なら」


 俺は槍を握り締める。


「悪いが、俺達も退けない」


「行くぞ、葵!」


「うん!」


 俺と葵は同時に地を蹴った。


 敵の槍が迫る。


 俺は身体を捻り、穂先を紙一重で避ける。


 そのまま槍の柄を掴み、力任せに引いた。


「なっ!?」


 敵兵の身体が前へ崩れる。


 そこへ。


 俺は槍の石突きを、敵兵の脇腹へ叩き込んだ。


「ぐっ……!」


 敵兵が呻き、膝をつく。


 だが。


「政貞、後ろ!」


 振り返る暇はなかった。


 背後から迫る刀。


 その刃が、俺の肩へと浅く食い込む。


「っ……!」


 熱い痛みが走る。


 血が鎧を濡らしていく。


「政貞!!」


 葵の顔が歪む。


「大丈夫だ!」


 俺は振り返りざまに槍を振るう。


 敵兵は刀で防ごうとした。


 だが俺の槍は、その刀ごと相手を弾き飛ばした。


「まだ……行ける」


 肩は痛む。


 腕も重い。


 だが、ここで止まるわけにはいかない。


 俺の後ろでは。


「政貞様を進ませろ!!」


「押し込めぇぇぇ!!」


 勘助殿と兵達が、残る旗本達へ食らいついていた。


 敵も味方も、皆が命を削っている。


 その中で、俺と葵の前にいた最後の旗本が、ゆっくりと刀を構えた。


「ここから先は、我らが命に代えても通さぬ」


 その声は震えていなかった。


 恐らくこの男も最初から分かっている。


 自分がここで死ぬかもしれないと。


「……立派だ」


 俺は小さく呟く。


「だが」


 槍を構える。


「俺は、生きて皆を連れて帰る」


「だから、通してもらう」


「来い!」


 敵兵が斬りかかる。


 鋭い一撃。


 俺は槍で受けた。


 だが、肩の傷が痛む。


 力が入らない。


 槍が大きく弾かれた。


「政貞!」


 敵の刀が、俺の首へ迫る。


 その瞬間。


「邪魔だって言ってるでしょ!!」


 葵が横から飛び込んだ。


 刀と刀がぶつかる。


 葵はそのまま身体を低く沈め。


 敵兵の懐へ入り込んだ。


「はっ!」


 葵の刀が、敵兵の胸元を深く切り裂く。


「……殿」


 敵兵は、最後まで義篤の方を見ていた。


 そしてゆっくりと、その場へ倒れた。


「政貞」


 葵が俺を見る。


「行こう」


「ああ」


 目の前を塞ぐ者は、もういない。


 佐竹の大旗。


 その下にいる義篤との距離は、あと数歩。


 俺達は血に濡れたまま。


 ついに義篤の前へ辿り着いた。


「佐竹義篤」


 俺は槍を構え、息を整える。


 義篤は馬上から、俺達を見下ろしていた。


 その顔は青白い。


 だがその目には、まだ強い光が残っていた。


「菅谷政貞」


 義篤は静かに俺の名を呼ぶ。


「見事だ」


 敵でありながら。


 どこか、俺を認めるような声だった。


 だが俺は槍を下ろさない。


「ここで終わらせる。小田の未来のために」


「……そうか」


 義篤は小さく笑った。


「ならば見せてみよ」


 ゆっくりと、義篤は馬から降りる。


 病に蝕まれた身体。


 それでも佐竹の当主は、己の刀を抜いた。


「佐竹の未来を背負う、この義篤を」


「お主に止められるか」


 朝霧の中。


 小田と佐竹。


 常陸の未来を背負う二人が。


 ついに向かい合った。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

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