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転生したら小田氏治の家臣だったので、滅亡の運命を変えます!  作者: 社長
第一部

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55話 新兵募集開始!

 あれからまた時間が経ち、八月の下旬となった。


 本日は忍び衆を探しに行った霧丸と落ち合う日であり、兵の募集日でもあった。


 府中の城下は、朝からいつになく騒がしかった。


 門前には見慣れぬ顔が多く集まり、槍や弓を肩に担いだ浪人風の男たちが列を作っている。


 その周囲では、評定役の者達が簡易の選抜を行っていた。


「次!」


 張りのある声が響く。


 列の先頭にいた男が前へ出ると、待ち構えていた三平太が木槍を放り投げた。


「受け取れ!」


 男は慌てながらも受け止める。


「構えろ!」


 言われるままに構えた瞬間、三平太が踏み込んだ。


 乾いた音が響く。


 わずか二合で男の槍は弾き飛ばされていた。


「失格!」


 容赦のない宣告。


 周囲の志願者達がごくりと喉を鳴らした。


「次!」


 再び声が飛ぶ。


 今度は痩せた浪人が前へ出た。


 こちらは動きが違った。


 足運びに無駄がない。


 三平太と数合打ち合い、最後は押し負けたものの、しっかり食らいつく。


「合格だ」


 その言葉に浪人は安堵の息を吐いた。


 俺は少し離れた場所からその様子を眺める。


「思った以上に粒が揃っているな」


 隣に立つ勘助殿が頷いた。


「流浪の身となった武士も多いのでしょう」


「主家を失った者達か……やはり、乱世だな」


 俺が呟くと、勘助殿は静かに答えた。


「乱世だからこそ、人も集まるのです」


 確かにそうだった。


 平穏な世であれば、わざわざ兵になろうとする者は少ない。


 だが今は違う。


 戦が職になっている。


 それは決して良いことではないが、しかしだからこそ多くの者が今こうして集まっているのだ。


 その時だった。


「政貞」


 数人の忍びらしき者を伴った霧丸が現れたのである。


「霧丸、久しいな。その者達が霧丸が集めた者か?」


「左様だ。いずれも他里の抜け忍や雇われ忍びだ。以前から小田に興味を持っていたそうで、二つ返事で雇われたぞ」


 へぇ、小田家ももうそんなに有名になってるんだなぁ。


 そう感心したところで、俺は集まった忍びについて霧丸に聞く。


 まず、集まったのは五人でそのうち四人が男、一人が女だった。


 男達は戦闘、潜伏、潜入に優れ、くのいちは色仕掛けや武士の寝床に入り込んでの情報収集が得意とのことだった。


 まさに、女の武器と言えるな。


 正直、ちよは腕っぷしはあるがそっちの方はからっきしなのでそうした能力を持っている者が加入してくれるのは有り難い。


 そうして霧丸からの説明も終わったところで、俺は三平太達の方へ視線を戻したのだが、目を離した隙に更に人は集まっていた。


「随分と集まっているな。今日中で千は超えるんじゃないか?」


「確かにな……それに、本当に様々な者がいる」


 浪人だけでなく、百姓や漁師、職人に果ては商人まで様々な者がやって来ていた。


「商人まで来るとは思わなかったな」


 俺がそう言うと、勘助殿は列の一角を見ながら頷いた。


「兵を集めるとなれば武具がいります。今のうちから顔を売っておこうということでしょう」


「ははぁ、営業熱心なことで」


 他の者が目をつけるよりもいち早く顔を売り、贔屓にしてもらおうということだろう。


 俺は感心しつつ、試験の様子を眺める。


 すると一人、三平太にボロボロにされながらもなお食い下がっている者がいた。


 その者は恐らく身なりからして百姓のようだった。


「だから不合格だって言ってるだろ! お前には才能がねえんだよ!」


「お願いします! まだやれます! オレはここで帰るわけにはいかないんです!」


 その身体は痩せて傷だらけであったが、その目に宿る闘志はまだ満ち満ちていた。


 俺はそんな彼の目を見ると、思わず身体が動いていた。


「三平太、この者は合格にしてやれ」


 俺がそう言うと、三平太と男は驚いてこちらを見た。


「と、殿!? コイツ、槍の腕はてんでないですぜ!?」


「そのようだな。しかし、根性はあるようじゃないか。根性も才能だ。採用してみてもいいんじゃないか」


 俺がそう笑いかけながら言うと、三平太は「まあ殿が言うなら……」と一応納得してくれた。


「あ、ありがとうございます!!」


 そして百姓も、地面に頭を擦りつけるほど深く礼をし、感謝の意を示した。


 そんな彼に俺はしゃがみ込むと、声をかける。


「お主、名は何と申す?」


「い、一郎太です!」


「一郎太、なぜそこまで必死に兵になろうとする?」


「家族のためです! 俺達は土地を失った流れ者で、食っていくためには金が必要なんです!」


「そうか」


 なるほど、あれだけ食いさがる理由がよく分かった。


 家族を食べさせるため、この時代においてはありふれていれる理由だが、同時に強く共感できる理由だ。


「言っておくが、訓練はもっと厳しいぞ」


「覚悟の上です」


 そう言ってのけた一郎太に俺は頷くと、菅谷隊の者に声をかける。


「この者の手当てを頼む。これからは彼も仲間だからな」


「ははっ!」


 そして一郎太が去るのを見届けていると、三平太がこちらへ近づいて来た。


「アイツ、役に立ちますかね?」


「それはこれから分かることさ。槍は駄目でも、他のことなら才能があるかもしれないしな。例えば、弓とかな?」


「弓ですか。まあ殿程の腕前の奴は現れないでしょうがね」


「俺より上など探せばいくらでもいるさ。それより、引き続き頼んだぞ」


「はい!」


 三平太が再び試験へ戻るのを見送ると、俺は再び観察へと戻るのだった。




 そしてしばらく時間が経ち、夕刻になると試験は終了した。


 俺は三平太に本日の結果を問う。


「三平太、結果はどうだ?」


「はい! すぐに使えそうなのが一六八名、訓練で様子見が必要なのが二百五十八名ですな」


「うおぉ……一日で随分と集まったもんだな」


「ははっ、そうですな! この試験、一週間に一回やるって話でしたけど、秋にはもう二千人集まってるんじゃないですか?」


「かもな。しかし、本当に集まったらまずいな」


 仮に二千人が集まったとしてギリギリ養えなくはないが、それにかなりの収益を持って行かれるし、教える者の数も足りていない。


 例え三千人集まったとしても、二千を区切りにして足切りしないといけないな。


「土浦から何人か親父の家臣に来てもらうか。じゃないと指導役がとても足りない」


「勝貞様の家臣ですか、そりゃあ頼もしそうですな」


「ああ、実際頼もしいよ」


 その分、気合いとやる気がありすぎて付き合わされる方はたまったもんじゃないけどな。


 俺は過去を思い出しながらため息をつく。


「まあとりあえず、今日はこんなところだな。三平太、ご苦労だったな。皆にもそう伝えておいてくれ」


「へい!」

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