47.5話 政治の決断
佐竹が小田の農具を買い集めている。
その情報をすぐに聞いた政貞はすぐに政治へと書状を送った。
そしてそれは、政治へと届いた。
「ふむ、佐竹がな……」
政治は伝令より文を受け取った後、一人言葉をこぼした。
佐竹の動き、これはどう考えても自然ではない。
何か大きなことをしようとしている、その前触れだった。
「義篤殿、お主が何をしようとしているのかはおおよそ予想がつくぞ」
佐竹義篤の妻は小田政治の姉である。
つまり、小田家と佐竹家は現在親戚関係にあたり、その縁で政治も何度も義篤と会ったことがあり、酒も酌み交わした仲である。
時には常陸の領地を巡って争い、時には共に戦った。
だからこそ、分かることがある。
佐竹義篤はもうすぐ、動こうとしているのだと。
理由は明白だ。
まず、佐竹義篤の悲願は常陸統一であるからだ。
近年、小田家は急速に勢力を拡大しており、それは府中だけでなく鹿島にも及んでいる。
佐竹義篤からすれば、到底無視できない勢力となったのである。
しかし、それは政治にとっても承知の上だった。
佐竹義篤に目をつけられると考えた上で、政治は勘助に、政貞に鹿島攻略を行わせた。
いずれ決着は避けられぬと分かっている以上、それまでにできるだけ大きな力をつけておきたかったからだ。
そして、常陸にはいよいよ小田と佐竹、残りは江戸家だけが残された。
江戸家が小田に吸収されたとすれば、いよいよ手がつけられなくなる。
だからこそ、今のうちに小田家を倒し、常陸を制覇しようと義篤は考えたのだろう。
だが、政治には他の理由があるように思えてならなかった。
政治は知っていた。
義篤は慎重な男だ。
こんなに目に見える形で動きを起こす男ではなかったはずだ。
だとすれば、義篤は焦っているのに違いない。
何を焦っているのか。
義篤との関係が深い政治には、自然とそれが分かった。
恐らく、義篤が動ける時間は残り少ないのだろう。
義篤は幼い頃から病弱であった。
ならば寿命が近づいているとしても、おかしくはない。
義篤が常陸統一を急ぐ理由、それは彼の寿命が近づいているからだと政治は結論づけた。
義篤の代では家督が継承された時、それはもう家中が荒れた。
だとすれば、彼の息子である義昭が家督を継いだ後もまた、家は荒れるだろう。
その前に常陸統一し、危険分子は全て排除しておきたいという義篤の考えは明白だ。
だからこそ、今回は必死になり、全力で義篤は挑んでくるだろう。
それこそ、小田家を滅ぼす勢いで。
「はぁ……」
政治はため息をついた。
もはや、戦は避けられない。
民も家臣も、多く死ぬだろう。
そのことに心を痛めるが、しかし義篤は和睦を持ちかけても決して応じないだろう。
一度こうと決めたら義篤は決して手心を加えることはない。
それを政治はよく分かっていたのである。
だからこそ、政治は決断した。
「戦うしかないな」
そうと決めると、政治は政貞に文を送ることを決めた。
急ぎ佐竹との戦のために備えよと。
そして評定を行い、その結果をこちらにも伝えよと。
政治は文に書き込むと、それを再び伝令に渡して政貞達へと届けさせた。
すると政治は城を出て、外を眺める。
そこには民達が平穏に過ごす姿があった。
必ずこの景色を、先祖代々受け継いできたこの城を守ってみせる。
政治はそう決意を固くするのだった。
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