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転生したら小田氏治の家臣だったので、滅亡の運命を変えます!  作者: 社長


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35話 葵との語らい

「という感じで皆喜んでいたわけですよ葵さん!」


「へぇ〜、そりゃあ良かったじゃん。私も見に行きたかったなぁ〜」


 後日、俺は葵に水車の完成とそれを皆がとても喜んでいたことを伝えていた。


 民達が喜んでいたのは嬉しいのか、葵も珍しく毒を吐くことなく俺の話を聞いていた。


 尤も、当日風邪をひいて見学に足を運べなかったのは残念そうであったが。


「今度、改めて見に行けばいいさ。それより、葵の風邪が治って本当に良かったよ。やっぱり葵には元気でいてもらいたいからな」


「あははっ、そんなこと言ったって優しくしてあげないからね。まあ軽い風邪で良かったよ、すぐ治ったし」


 葵の言う通り、軽い風邪で良かった。


 この時代の風邪はタチの悪いものだと死にかねないからな。


 正直、水車が完成してホッとすると同時に葵のことを考えると大丈夫か気が気でなかった。


 まあ、何事もなくて本当に良かったけどな。


「そうだな。ああそれと、今度水車の完成祝いにあの村で祝賀会を開くんだ。葵も勿論くるだろ?」


「勿論! 魚あるよね魚!?」


「ああ勿論! 霞ヶ浦で獲れた新鮮な魚を豪華に振る舞うつもりだ、楽しみにしておいてくれよな!」


「いいじゃんいいじゃん! やっぱり、大きなことを成し遂げた後は盛大に祝わないとね〜!」


 葵は上機嫌そうに笑うと、あの魚が食べたい、この魚が食べたいも早くも宴の献立を考え始める。


 全く気の早いことで。


 まあそれだけ楽しみにしてくれているということだろうけどな。


 それにしても、今回水車を作ることができたのは小田家にとって非常に大きな出来事だっただろう。


 コストこそ、そこそこかかるものの今の小田家の財力であれ水車をある程度量産することは十分可能だ。


 まずは建築士達に水車をまたいくつか作らせ、経験を積んでもらったところで小田城や土浦城にも派遣してそちらの建築士達にも水車の作り方を伝授し、作ってもらう。


 そうすれば年月はかかるだろうが、小田領全体に水車が普及することだろう。


 そうなれば更に生産活動に割く時間が増え、より収益を高めることができる。


 うんうん、この1つの水車から小田領はより豊かになっていくことだろう。


 まあ数が増えていくと、商人達にも知られて他国に情報が流れてしまうだろうがな。


 真似されて他国の強化に繋がりかねないが、それについては仕方がない。


 技術の革新にそうしたリスクはつきものだからな、それを考えていては領地を発展させることはできない。


 それに、まだまだ俺の脳内には領地を発展させることのできる様々な知識がある。


 今すぐそれを全部実行することはできないが、徐々にそれを実現させていこう。


 そんなことを考えながら葵に視線を向けると、丁度葵もこちらを向いていたようで視線が合う。


「ねえ政貞、私とアンタって一緒に出かけたことってあんまりなかったよね」


「それは……確かにそうかもな」


 というのも俺は仕事でほとんど家臣達といるし、休みの時も氏治様と一緒なことが多く、家に帰っても疲労ですぐ寝ていることがほとんどだ。


「いや、改めて思い返すとお前のこと放ったらかしすぎだな……せっかく新婚なのに、ごめん」


「なに謝ってんのよ、庶民ならともかく武家の夫婦なんてそんなもんでしょ」


「まあそうかもしれないが……」


 親父と母さんは中々の相思相愛っぷりだが……まあ、あれは珍しい方なのかな。


「申し訳なく思うなら、一つ頼みを聞いてくれない?」


 葵は人差し指を立てて、可愛らしい笑顔を浮かべて言った。


 俺は思わずドキッとし、反射的に頷いた。


 葵はそれに満足そうな表情を浮かべる。

 

「それじゃあ明日は2人っきりでどこかに出かけようよ。なんかそれって夫婦っぽいでしょ?」


「2人きりで出かけるか……ははっ」


「ちょっと、何がおかしいのさ!」


 葵は俺が笑ったことにぷんすかと頬を膨らませて怒る。


 その顔が可愛らしくて可笑しくて、俺はより笑ってしまった。


「あはははっ、ごめんごめん! まさかお前がそんな真っ当なこと言ってくるなんて思わなくてさ」


「はぁ? 何さそれ……で、行くの? 行かないの?」


「勿論いくさ。しかし2人きりで出かけるとは、何気に初デートだな」


「うん、でえと?」


 おっと、つい現代の言葉が出てしまった。


 葵といると、素の自分で話すことが多いからつい口が滑るんだよな。


「デートとは、異国の言葉で仲のいい男女が2人で遊んだりや出かけたりすることを指す言葉だ」


「へー、アンタこんなど田舎の武士のくせして、よくそんなこと知ってるよね」


「ど田舎て……まあ、京や堺と比べたら田舎かな」


 一応、公方様の古河御所はあるんだがいかんせん関東は戦で荒れ果ててるからなぁ。


 いや、それに関しちゃ京都の方が酷いか。


 一体いくら燃やされるんだよって勢いで何度も燃やされてるし。


 将軍が御所にいられないことも珍しくないからなぁ、畿内は関東に負けず劣らずの魔境だよ本当。


「堺ねぇ……私、京はどうでもいいけど堺には行ってみたいんだよね。珍しいもの沢山ありそうだし、異国の物も売ってたりするって聞くしね」


「異国ね……葵もやっぱり興味あるのか?」


「そうだね。いつかは行ってみたいけど、でもその前に日の本中を巡りたいかな。こんな関東の小さな街だけじゃなくて、もっと広い世界を知りたいって思うの」


「それがお前の夢か?」


「まっ、そんなところだね!」


 広い世界を見たい、か……ははっ、葵らしいな。


「そっか。じゃあ、戦が落ち着いたら日の本中を一緒に旅しよう」


「いいね。いつになるか分かんないけどね」


 確かにな、と笑いながら俺は来るかも分からないその日に思いを馳せる。


 俺達が旅をできるようになるには、少なくともこの関東において北条に拮抗する力を身につけなくてはならないだろう。


 そのためにまず立ちはだかる目標は常陸統一……最初の目標からして中々ハードだな。


 だが、不可能だとは思っていない。


 戦国後期と違って、佐竹もまだまだ成長前の時期だ。


 このまま小田家が躍進していけば勝機は十分にある。


 尤も、あの家と戦う前にまずは鹿島と島崎をどうにかしないといけない。


 まだ戦うには早いが、領地を安定させた暁には切り取り、常陸南部を小田のものにしてやろう。


 その時が楽しみである。


「ははっ、悪い顔してるねぇ! 関東を取る悪巧みでも考えてた?」


「それほど大それたことは考えていないさ。何はともあれ、今は領地を発展させ、内政に集中することが大事だ」


 いずれ行う戦のためにもな。


「そうだね。アンタや小太郎様はここを治めたばかりだし、まずは民心や家臣の心を掴むことが大事。よく分かってんじゃん」


「はははっ! それで葵、お前はどこに行きたい?」


「そうだねぇ……まあ今回はアンタが決めてくれていいよ」


 おっと、俺に譲ってくれますか。


 まあ俺が行きたいところといえば決まっている。


「分かった。それじゃあ、あそこに行くか。場所の名前は———」


 そして後日、俺は葵と初めてのデートを行うことになるのであった。

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