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転生したら小田氏治の家臣だったので、滅亡の運命を変えます!  作者: 社長
第二部

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108話 民を救うには

「なるほど、宇都宮ではそのようなことが起こっているのか……」


「はい、父上」


 あの後、ワシは父上に宇都宮で起こっていること、宇都宮から逃げてきた民達のことを話していた。


「尚綱も本来ならばそのような稚拙なことをする男ではないが、今回は随分と恨みを募らせているようだな」


「尚綱が小田を憎むことは当然だと思います。しかし、だからといってそれで民を悲しませるのは言語道断と考えております」


 ワシの言葉に、父上は深く頷いた。


「うむ、それは尤も。今の尚綱に宇都宮を治める器はない。このまま放置しておけば、宇都宮の民達は更に苦しむこととなるだろう」


 その言葉に、ワシはあの家族のボロボロな姿を思い出した。


 あのような者がこれからも増え続ける。


 それは決して、あってはならぬことだ。


 そう考えている時であった。


「小太郎よ、宇都宮の民を、小田の民ではなくとも困っているならば救いたいと思うか?」


 父上がそう、問いかけてきた。


 理由は分からなかった。


 だがワシは、即座に答えた。


「はい! 知ってしまった以上、ワシはもう見て見ぬふりはできませぬ! 宇都宮の民であろうと、困っているのならワシは救いたい!」


「ふっ、そうか」


 父上はワシの言葉に穏やかな笑みを浮かべると、頷いた。


「では宇都宮を切り取るとしよう。丁度下野にも手を伸ばしたいと考えておったからな」


 父上は笑っていたが、その目は鋭いものになっていた。


 他家の領地を狙い、それを手に入れようとする戦国大名の目であった。


「すでに結城や小山といった下野の諸勢力とは手を結んでいるのですよね?」


「うむ。下野で我らに敵対しているのは宇都宮だけじゃ。その宇都宮さえ抑えれば、下野も小田のものとなるじゃろう」


 だが、佐竹の時とは違って父上は地方の統一を口にしながら余裕の笑みを浮かべていた。


 佐竹とは違って宇都宮には付け入る隙がある。


 言外にそう言っているようだった。


「さて、今の宇都宮ははっきり言って敵ではない。佐竹をはじめとした諸勢力に呼び掛ければ簡単に滅ぼせるじゃろうがどうじゃ?」


「そ、それではいけませぬ! ワシは宇都宮の民を救いたいのです! 戦をすれば彼らを傷つけてしまいます!」


 ワシは父上の言葉を否定するが、父上はなぜか満足そうな表情を浮かべて頷いた。


「その通りじゃ。いくら戦力差があると言っても攻め込んで領地を奪えば、そこに住むもの達の生活を奪い、恨みを買うこととなろう。しかし、戦以外で宇都宮を手に入れる方法、それはお主には分かるか?」


「そ、それは……」


 ワシはそこで言い淀んでしまう。


 ワシは政貞のように有効な策を考えることはできない。


 じゃが、だからといって戦をして小田も宇都宮の民も傷つけるのは嫌じゃ。


 ワシは必死に考える。


 これまでのことを思い返し、何か手掛かりがないか探る。


 その時であった。


「あっ」


「ほう、何か思いついたか?」


 ある、この状況において有効な策が一つあった。


「はい、その策は……」


 ワシは父上に説明をした。


 まず、商人を宇都宮領に派遣し、宇都宮と小田に対する生の声を確かめる。


 今回、小田の情報は十分に宇都宮に流れているであろうし、下手に小田の情報を流せば商人が処罰される可能性もあるのであくまで情報収集に徹してもらう。


 そして、それと並行して宇都宮有力家臣に本領と家名の安堵を条件に調略を仕掛ける。


 その後、調略が十分に進み、民達が小田に心を傾けていることを確かめた上で宇都宮領に侵攻。


 宇都宮の百姓達に呼び掛け、小田の民にすることと宇都宮からの解放、そして小田の民になる事の利を説き、仲間に引き入れる。


 そして百姓、町人達を仲間に引き入れた上で宇都宮城に向かい開城を迫る。


 それに調略を仕掛けた宇都宮の家臣を呼応させ、外と内から宇都宮城を揺るがし、降伏に追い込む。


 それが宇都宮に対して使えると考えた策である。


 その内容を聞くと、父上は満足そうに頷いた。


「ほほう、政貞が大掾に用いたのと同じ策じゃな」


「はい、結局政貞の真似をしているだけなのが情けないですが……」


「何を言う。家臣の策であろうと有効ならば躊躇わずに用いる。それは上に立つ者として重要な考え方じゃ。お主はそれができておるということじゃ」


「そ、そうでしょうか……」


 父上は褒めてくださるが、いまいち実感が湧かない。


 しかし、父上が頷いたということはこの策は有効だということなのだろう。


 ならば早速やるべきじゃ。


 こうしている間にも、宇都宮の民達は苦しんでいるのじゃからな。


「父上、それでは早速ですが……」


「うむ、分かっておる。早速商人を使いに出し、宇都宮の有力家臣に調略を仕掛けようぞ」


「ありがとうございます、父上」


 とりあえず、これで一歩すすんだ。


 そして今日から、宇都宮を手に入れるための人の心を掴む戦。


 それが始まろうとしているのであった。

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