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転生したら小田氏治の家臣だったので、滅亡の運命を変えます!  作者: 社長
第二部

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98話 春季評定その1

 それから数ヶ月、冬を無事に越した俺達は春を迎えていた。


 この冬は湯婆の開発のおかげで民達は例年よりも冬を楽に越すことができ、感謝の声が多く届いた。


 その声は俺達の大きな励みとなり、身体だけでなく心まで温まるようであった。


 次回の冬には、更に冬を楽に過ごせるように、また新たな物を開発するとしよう。


 さて、四月になったことですっかり冬の寒さは鳴りをひそめ、代わりに暖かで心地のいい気温となっていた。


 木々や植物達は青く茂り、冬眠から覚めた動物達が姿を現し、人々の表情も心なしか冬より生き生きとしている。


 年も1544年を迎え、俺は晴れて17歳、葵は13歳となった。


 葵はその年齢のわりにはそれはもう発育がよく……ゲフンゲフン! まあ、この半年で葵も大人っぽく成長していた。


 無論、俺の体もより逞しくなった。


 港の整備や水車造りなどで身体を動かしまくったおかげである。


 そして春を迎えたことであの時期がやっていた。


 四季に一度行われる、季節評定である。




「よし、これより評定を始める」


 四月の中旬、春の作物の収穫を終えたことを受け、俺達は評定を始めていた。


 評定ということもあり、評定の間には真剣な空気が流れる……はずだったのだが。


「それにしても府中の、しかも城じゃなく大将の館で評定とは何だかなぁ……」


「締まらんな」


「ほ、ほっとけ!」


 そう、俺達は牛堀ではなく、現在府中にある俺の館の中で評定を行っている。


 なぜかというと、港や農村、街の整備、民に役立つ物の開発など諸々で城を作る時間などなかったためである。


 果たして城が建てられるのはいつになることやら。


 そんなことを考えつつ、俺達はこの府中で評定を行うこととなったのである。


 しかし随分と狭い。


 主要な者たちを入れたら部屋がぎゅうぎゅうになってしまった。


 これは夏までには館だけでも作らないといけないな。


「コホン! とにかく、評定を始める! 勘助、まずはこの半年間の成果を頼む!」


「ははっ!」


 そして勘助殿の口から、半年間の成果が語られた。


 まずは検地と千歯こき等の新農具の導入について。


 こちらは府中と江戸は以前から実施及び導入済みだったので、後は牛堀で行うのみであり、すぐに完了した。


 検地については不満が上がったものの、新農具を全農家に導入することを条件に抑えられたので、特に問題は起こらなかった。


 そして次に水車の設置であるが、これは各領地に精米用と製粉用の水車をそれぞれ一基ずつ、足踏み式揚水器をそれぞれ十基ずつ設置することに成功した。


 これは非常に評判が良く、農村の者たちはこぞって集まっており、また町の者や旅の者達も見物に現れるなどちょっとした観光名所と化している。


 この前訪れると、百姓達が僅かだが見物客から銭を取っていた。


 全く、逞しいというかちゃっかりしてるというか……。


 そして揚水器の設置のおかげで早くも石高が三百石増える見込みとなっている。


 まだ発展段階でこれなので、これからが楽しみである。


 さて、次は港の整備についてだ。


 港は第一段階の整備が八割型完了したところである。


 この前製作した手回し巻き上げ機をはじめとした現代設備も徐々に設置が進みつつあり、まだまだ発展段階ではあるが、現時点でなかなかの港に仕上がっている。


 また、船の数も多く増え、漁具の質も上がったことで水揚げ量も大きく伸びた。


 そして港に生簀、干し棚、燻製小屋、荷送り板といったものが設置されたことで廃棄となる魚も減り、売れる魚、食べられる魚が増え、収入も増加した。


 一方、全体的な収益は徐々に安定が見え始めてきたが、まだまだ先行投資した分を取り返せるほどではない。


 とはいえ、まだまだ貯金には余裕があるので問題はない。


 そして次は収穫した野菜についてである。


 こちらは干鰯の効果もあり、例年より二割収穫量が増加した。


 この調子であれば米や大豆、菜種の方も楽しみである。


 そして味噌や醤油、油を作るための施設も完成が近づいており、収穫が終わり次第、作り始めてもらうつもりである。


 幸い、この数年で味噌や醤油、油の職人は増えたのでそちらについては困っていない。


 後は収穫を待つだけである。


 そして人口についてだが、楽市楽座政策と関税の緩和が効果を奏したのか当初、四千五百人程度だった人口は六千五百人まで増加した。


 これは楽市楽座や関税・津料の緩和は勿論、領内で菅谷隊や常備兵の生き残り達に警察の役割を果たしてもらい、安全に住める環境にしたことから定着率が増加したことが大きい。


 更に、職人や商人、医者や薬師達も多く移住してきており、彼らの家族がここに定住したことも牛堀の人口が大幅に増加した理由となっている。


 とまあ、半年だけでもこれだけの成果が出たわけである。


 そんな結果を聞いた皆の反応は上々なものだった。

 

「おいおい、とんでもねえな! 半年で二千人も増えたのかよ!?」


「すごいじゃん、半年前の人口の半分も増えたってことじゃん!」


「通りで人が随分と増えたなって思いましたよー!」


 まず皆が注目したのは人口の増加量だった。


 それはそうだ、俺もまさかここまで増えているとは思わなかった。


「理由としては常陸が統一され平和となったこと、楽市楽座と関税の緩和、新規住人の優遇政策を取ったことが大きいでしょうな」


「それにしてもこれほど増えるとはな……中には忍びの者もいたぞ。つい最近、新しくうちに加入してきた」


 そうなんだ、やっぱり同じ忍びだと分かるもんなんだな。


 と、皆浮かれていたがそこに久幹が咳払いをし、話は入ってきた。


「皆様、人口が増えたのは喜ばしいですがその分、流れ者が増えて領地の治安が脅かされる懸念があります。民達のためにもより見張りを厳しくする必要がありますよ」


「けっ、お前にそんなこと言われなくても分かってんだよ!」


「まあまあ、由兵衛殿! 久幹殿の言われることも尤もだ! これからは怪しい者を見つけたら手当たり次第にとっ捕まえるとしよう!」


「本当に怪しい者だけだぞ」


 俺は頼綱殿に釘を刺しつつ、思案する。


 確かに、人口が増えればそれだけ治安を守ることも難しくなる。


 今は戦の気配がなく、菅谷隊や常備兵を警備に回すことができているものの、やはり毎日というわけにはいかず警備が手薄となる日は存在する。


 ならばやはり———。


「次は街の警備をはじめ、この一年での政策と方針について新たに始めなければならないな」


 俺の言葉に皆頷く。


 そして本日の評定は早くも本題へと入っていくのだった。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

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