謎の言葉
「お嬢様」
文官が書類を持ってやって来た。
「経済奴隷の人数の件ですが、中間報告が出ました」
私は机から顔を上げる。
「どれ位?」
文官は書類を確認した。
「現在把握できている人数で――約千四百名です」
私は少し驚いた。
「そんなに?」
文官は続ける。
「ただし」
「以前からこちらで引き取っている者もいます。その分を差し引けば、以前よりは減っていると思われますが」
私は頷いた。
「成る程」
千四百。思っていたより多い。
私は少し考える。
「それなら希望者をこちらに」
文官はすぐ理解した。
「地下都市へ、ですか?」
私は頷いた。
「そう。人手はいくらあっても足りない」
地下工業都市は拡張中。
工場。農地。建設。
仕事はいくらでもある。
文官は頭を下げた。
「手配致します」
文官が部屋を出て行く。
私は椅子に背を預けた。
「……ふぅ」
かなり居る。思っていたより多い。更に多い可能性も否定出来ない。
私は指で机を軽く叩いた。
「文官さん」
戻ろうとしていた文官が振り向く。
「はい?」
私は聞いた。
「もし経済奴隷を全部ここに引き込んだら、問題は起きる?」
文官は少し考えた。
そして慎重に答える。
「……いえ。基本的には問題は無いと思われます」
私は眉を上げる。
「思われます?」
文官は少し苦笑した。
「前例がありません」
私は小さく笑った。
「まあそうよね」
今までこんな事は起きていない。
奴隷を解放する為に仕事を作る。
そして集める。
そんな領地は聞いた事がない。
私は腕を組む。
「となると後から何か起きそうね」
何が起きるかは分からない。
こういう制度を動かすと必ず反動が出る。
私は小さく呟いた。
「頭の片隅に入れておくか」
その時、別の文官が慌てて入って来た。
「お嬢様」
「何?」
「お嬢様が外出中の時に、ゆき様からホットラインで連絡がありました」
私は少し驚く。
「なに?」
文官はメモを見た。
「冒険者ギルドで、RFIDを発見」
私は瞬きをする。
「……は?」
文官は続ける。
「伝えれば解る、との事ですがこれは何でしょう?」
私は首を傾げた。
「他には?」
「特には」
私は椅子にもたれた。
「何のこっちゃ?」
RFID。聞いた事はある。
確か――非接触の識別タグ。
カードとか。物流とか。
私は少し考える。
「冒険者ギルドで?」
意味が分からない。私は首を振った。
「まあ、ゆきちゃん焦ると変な事言うから」
文官は困った顔をしている。
私は肩をすくめた。
「その内また連絡来るでしょ」
そう言って書類を手に取る。
私はふと手を止めた。
「……RFID?」
その言葉だけがなぜか、妙に引っかかっていた。




