重機の試練
ゆきちゃんからの第二団の鉄鉱石が届いた。
今回は問題なく全量。鉄鉱石の量は当面問題無さそうね。
カーデン・ロイド型ショベルカー。
私はトンネル工事現場に立っていた。
目の前には、あの小型履帯車。
ショベル付きの重機。
この世界で初めての機械だ。
私は操縦担当の作業員に言った。
「操作は覚えた?」
男は緊張した顔で頷く。
「はい!いけます!」
私は笑った。
「じゃあ――やってみましょう」
エンジン始動。
ガガガガ……!
エンジンが動き出し、履帯がゆっくり回る。
そしてショベルが地面へ。
ザクッ。
土砂が掘り起こされた。
作業員達が一瞬固まる。
そして。
「おおおお!」
歓声が上がった。
そりゃそうだ!今までツルハシ、スコップ。
全部人力。
それが――機械が勝手に掘る。
しかも。
「はやい!」
「人の何倍だ!」
土砂がどんどん削られていく。
作業員達は興奮していた。
「すげえ!」
「止まらねえ!」
私は腕を組みながら頷く。
「良いわね」
問題はすぐに起きた。
数時間後。
「お嬢様!」
作業員が叫ぶ。
「止まりました!」
私は眉をひそめた。
「え?」
機械は停止していた。
私は近づくと油が漏れている。
私は呟いた。
「油圧抜け」
さらにエンジンを触る。
熱い。
「……オーバーヒート」
私はため息をついた。
「やっぱり」
設計の問題ではない。
素材だ。金属精度。加工精度。
全部まだ低い。
私は文官を見る。
「予備投入」
「はい!」
すぐに二号機が動き出す。
壊れた機体は回収。
工房へ。私は呟いた。
「改良ね」
石炭露天掘り用の機体も、まだ投入しない。
まずは改良。試す。直す。
また試す。それを繰り返すしかない。
問題はもう一つあった。
トンネル内部。
作業員が咳き込んでいる。
私は気づいた。
「……粉塵」
さらにエンジン排気。
一酸化炭素。
私は顔をしかめた。
「中毒になるわね」
私はすぐに設計を始めた。
呼吸マスク。
フィルター。
吸気弁。
完成したのは――かなり大きなマスク。
文官が言う。
「お嬢様」
「これ……」
私は笑った。
「なに?」
「なんだか変な形ですね。両脇に袋?呼吸をすると膨らんだり萎んだり」
私は肩をすくめた。
「仕方ないでしょ」
前世で見た映画の様なあのマスク。
私は笑う。
「まあいいわ」
機能は問題ない。
粉塵も防ぐ。
排気ガスもある程度遮断出来る。
数日後。
改良型ショベルカーは再び動き出した。
ガガガガガ……!
履帯が回り、ショベルが動く。
今度は止まらない。
朝から夕方まで一日中。
機械は動き続けた。
私は満足して頷いた。
「成功ね」
問題は残っている。
工房では整備班が苦労していた。
「この機体」
「壊れ方違うぞ」
「こっちはギアだ」
「こっちは油圧だ」
私は苦笑した。
「精度ね」
加工精度。材料品質。まだバラバラ。
一台一台。壊れ方が違う。
私は空を見上げた。
そして呟いた。
「次の課題ね」
機械は出来たが本当の問題は――精度向上だ。




