鉄路計画
私は執務室の机の上に広げた地図を見ながら、腕を組んでいた。
開拓拠点。露天掘りの石炭。
トンネル工事。そして領都へ続く補給路。
今の問題は――輸送。
私は小さく呟いた。
「長距離移動……」
荷馬車では限界がある。
遅いし積載量も少ない。天候にも左右される。開拓が進めば進むほど、輸送量は増えていく。
つまり。
「鉄道ね」
私は小さく笑った。
前世なら当たり前の存在。
この世界では当然存在しない。
作れない訳ではない。
問題は規模だ。
いきなり大規模鉄道は無理。
人手も設備も足りない。
私は地図を指でなぞる。
「まずは小さいの」
開拓用。鉱山用。そしてトンネル用。
私は思い出す。
「……確か」
前世で乗った記憶。黒部ダムだったかしら?
山奥。細い鉄道。
「トロッコ列車」
あれなら、この世界でも作れる。
私は少し考える。
「軌間は……」
確か。
「七百六十二ミリ」
ナローゲージ。狭軌鉄道。
これなら資材も少なくて済む。
急カーブにも対応出来る。
山岳地帯には向いている。
私は頷いた。
「これね」
まず必要なのは、蒸気機関車。輸送用車両。
石炭輸送用の貨車。
そして――
「客車も必要ね」
作業員の移動用だ。
それに私はもう一つ書き加える。
「トンネル内部用」
蒸気機関車はトンネル内では煙が問題になる。
そこで必要なのは――
「蓄電型機動車」
バッテリー式機関車。
鉱山ではよく使われていた。
石炭輸送にも使える。
私は小さく笑う。
「結構増えたわね」
蒸気機関車。貨車。客車。
蓄電型機動車。石炭用輸送車。
私はすぐにスキルを使う。
「……設計」
頭の中に機構を描く。
ボイラー。シリンダー。車輪配置。
フレーム構造。そして材料。
しばらくして私は目を開けた。
「おー」
思わず声が出た。
机の上の紙には、図面が並んでいる。
「出来たわ」
必要材料も表示されている。
鉄。鋼材。銅。木材。ゴム。
そして細かい部品。
私は苦笑した。
「やっぱ多いわね」
蒸気機関車は、かなりの材料を使う。
蓄電型機動車も、バッテリーが必要だ。
私は紙をまとめる。
「材料頼んでおくか」
いつ届くかは分からない。
先に手配しておく必要がある。
私はさらに考える。
「……あと」
もう一つ必要なもの開拓。トンネル工事。
採掘。
それらを効率化するための――
工事用車両。
私は腕を組む。
「基本形……」
どうするか。この世界の加工精度。
整備能力。それを考える。
そして一つ思い出す。
「……あ」
小さく笑った。
「カーデン・ロイド」
小型履帯車。豆戦車。構造はシンプル。
車体も小さい。
私は机に新しい紙を置く。
「これをベースに」
車体共通。用途別に改造。
工事用。輸送用。採掘補助。
全部作れる。
問題はエンジン。私は少し悩む。
「水冷は……」
ラジエーター。ポンプ。配管。
部品が多い。整備も面倒。
私はすぐに結論を出した。
「空冷ね」
構造がシンプル。
この世界の技術でも再現しやすい。
私は再びスキルを使う。
「設計」
エンジン。履帯。変速機。フレーム。
しばらくして。
私は笑った。
「よーし」
紙の上には、新しい図面が並んでいた。
鉄道。動力車。工事車両。
私はそれを見ながら呟いた。
「これが動き出したら」
そして小さく笑う。
「開拓、加速するわよ」




