山を貫く計画
私は数名の作業員と文官を連れて、少し離れた丘の斜面に来ていた。
地面に手を当てる。
「……分析」
視界の奥に、地下構造が浮かび上がる。
岩盤。土層。そして黒い帯。石炭層だ。
「やっぱり」
私は小さく頷いた。
「厚い所と薄い所があるわね」
同じ石炭でも、場所によってかなり違う。
厚く広がっている場所。
細く途切れている場所。
採掘するなら当然、厚い層を狙うべきだ。
私は足元を指す。
「ここ、この辺りは厚いわ」
文官がすぐに書き留める。
「はい」
彼の持つ地図には、既にいくつもの印が付いていた。
石炭層の分布。岩盤の位置。地下水脈。
すべて少しずつ記録されていく。
まあ、いつもの流れだ。
私はさらに地下へ意識を向ける。
すると。
「……ん?」
少し違う反応があった。石炭ではない。
岩でもない。私は目を細める。
「何かあるわね」
文官が顔を上げる。
「何でしょう」
私は少し集中した。地下。もっと深く。
すると、微かな反応。硬い。
そして、密度が高い。
私は首を傾げる。
「うーん……?」
少し考える。
「宝石?」
反応はかなり深い。私は苦笑した。
「深すぎるわね」
今のスキルの範囲では、完全には届かない。
はっきりした情報が取れない。
私は肩をすくめた。
「まあいいか」
文官を見る。
「ここ」
地面を指す。
「要重点地下」
文官はすぐに書き込んだ。
「後で調べる場所ですね」
「そう」
今はやる事が多い。石炭。拠点。トンネル。
宝石らしきものは、後回しだ。
私は立ち上がった。
その時だった。遠くから声が飛んできた。
「お嬢様!」
私は振り向く。
一人の作業員がこちらへ走ってくる。
かなり急いでいる様子だ。
「どうしたの?」
男は息を整えながら言った。
「報告です!」
「はい?」
男は少し嬉しそうに言った。
「隣国へ向けてのトンネル採掘開始しました!」
私は思わず笑った。
「やっとね」
文官も頷く。
「予定通りですな」
私は大きく息を吐いた。
「解りました。そのまま進めて」
作業員は頭を下げる。
「はい!」
男はすぐに走って戻っていった。
私は山の方を見る。あの山の向こう。
そこには――ゆきちゃんの領地がある。
私達は事前に計画を立てていた。
お互いの領地側から掘り進める。
そしてどこかで繋がる。
もちろん簡単ではない。
角度。距離。岩盤。
全部計算している。
多少のズレは出るだろう。
それでも。最終的にはどこかでぶち当たるはずだ。
私は小さく呟く。
「ついに始まったわね」
ゆきちゃんの方では、すでに掘り進めていると聞いている。
こちらが少し遅れていた。
ようやく追いついた。
私は山を見上げる。あの向こうには友達がいる。私は小さく笑った。
「待ってなさいよ」
そして呟く。
「こっちも掘り進めるから」
山を挟んだ二つの領地。
その山は、もうすぐ――貫かれる。




