補給線異常
荷馬車隊がこちらへ向かっている。
文官の話では五十台。
それだけの規模なら、かなりの資材が届くはずだ。
私は草原を眺めながら呟いた。
「そろそろ見えてもいい頃よね」
文官も地図を見ながら頷く。
「そうですね」
「順調なら、今日か明日には」
その時だった。
見張りの兵が声を上げた。
「伝令です!」
私は振り向く。
一頭の馬が草原を駆けてくる。
かなりの速度だ。
乗っている男は埃まみれだった。
馬が止まると、男はすぐに降りる。
そして膝をついた。
「お嬢様!」
「荷馬車隊より伝令です!」
私は眉をひそめる。
「荷馬車隊?何かあったの?」
男は息を整えながら答える。
「はい」
「予定より進行が遅れております」
文官がすぐに聞いた。
「理由は?」
男は答える。
「谷の橋が崩落しました」
私は思わず言った。
「……橋?」
男は頷く。
「はい」
「荷馬車が通る前に崩れた為、隊列は停止しております」
私は腕を組む。なるほど。
道が一本しかない場所なら、橋が落ちたら終わりだ。
文官が地図を広げた。
「この辺りですか」
男は指差した。
「はい」
私は地図を覗く。
そこは確かに細い谷だ。
川が流れて橋が一本しかない場所。
私は小さく息を吐いた。
「よりによって……」
文官が呟く。
「修復には時間がかかりますな」
私は男を見る。
「荷馬車は全部止まってるの?」
男は首を振る。
「いえ」
「一部の荷馬車は引き返し、別の道を探しています」
文官が眉をひそめた。
「別の道?」
男は少し困った顔をする。
「ただ……その道は」
私は聞く。
「何?」
男は答えた。
「魔物の出る地域です」
私は一瞬黙った。そして小さく笑う。
「なるほど」
補給線。これが開拓の生命線だ。
そして一番狙われやすい。
私は地図を指した。
「この橋」
「作り直すしかないわね」
文官が頷く。
「そうなります」
私は少し考えた。
橋。道。輸送。
この問題は、いずれ必ず出る。
むしろ今出て良かったのかもしれない。
私は小さく呟いた。
「……これは」
そして少し笑った。
草原の拠点はまだ小さい。
この場所は確実に――
世界と繋がろうとしていた。




