黒い燃料
次の日の朝。
草原には朝霧が薄く広がっていた。
野営地の周囲では、巡察隊の人員が慌ただしく動いている。
だが私は――一人、地面を見つめていた。
「……分析」
スキルを発動する。
視界の奥に情報が浮かぶ。
地下構造。岩盤。土壌。
そして黒い層。
私は小さく呟いた。
「やっぱり……」
もう一度。
「分析」
結果は同じだった。
地下数メートル。かなり広い範囲。
どう考えても――
「かなりの量ね」
昨日の時点で可能性は高かった。
だが、確信するにはまだ早い。
私は振り返る。
「掘削はどう?」
作業員達が地面を掘っている。
比較的浅い反応がある場所を選んで、数箇所。
目視で確認するためだ。
スキルの情報だけでは足りない。
実際に掘り当てて確認する必要がある。
念には念を。確実な証拠が必要だ。
その時だった。
「お嬢様!」
作業員の声が響いた。
私はすぐに近づく。
「何?」
作業員が掘り出した土の中から、黒い石を取り出す。
「この黒いのですか?」
私はそれを受け取った。
ずしりとした重み。
私はすぐにスキルを使う。
「……分析」
表示された情報を見て、私は思わず笑った。
「石炭」
間違いない。情報も一致している。
私は石を掲げた。
「掘り当てたわね」
文官が近づいてくる。
「確認出来ましたか?」
私ははっきり言った。
「確定」
石炭。新しい燃料源。
私は空を見上げた。
「これは……」
文明の流れが変わる。
鉄。蒸気。機械。すべての基礎。
私は思わず呟いた。
「世界が加速するわよ」
文官が少し首を傾げる。
「そこまでの物なのですか?」
私は頷いた。
「ええ」
燃料。それも大量。
これは国家を変える資源だ。
私は文官へ向き直る。
「文官さん」
「はい」
私は真剣な声で聞いた。
「もし新しい燃料源が発見されたら」
「どんな問題が起きる?」
文官は少し考えた。そして静かに答える。
「……大事になりますね」
私は苦笑した。
「ですよね」
資源。特に燃料。国家の力そのもの。
隠す事は出来ない。いずれ知られる。
ならば先に動く。私は言った。
「早馬を出して」
文官が頷く。
「伯爵様へ報告ですね」
私は石炭を見ながら言った。
「文面はこう書いて」
そして、少し笑った。
「世界がひっくり返る燃料源を発見」
文官が石を見た。
「この黒い石……ですか?」
私は力強く答えた。
「そう」
この石はただの黒い石ではない。
これは未来を燃やす石だ。
そしてこの発見は――
まだ誰も知らない革命の始まりだった。




