夜空の合図
石炭と思われる場所を確認した私は、すぐに作業員へ指示を出した。
「ここに杭を打って」
位置の確認。鉱脈の広がり。
まずはそれを把握する必要がある。
作業員達は木杭を持って地面へ打ち込み始めた。
トン。
トン。
トン。
私は途中で眉をひそめた。
「……ちょっと待って」
杭が。至る所に刺さっている。
つまり。どこを調べても反応が出る。
私は地面を見回した。
「これは……」
かなりの量がある?
もしそうなら鉱山として成立するどころの話ではない。
大鉱脈の可能性がある。
私はすぐに言った。
「杭打ちは一旦中止」
無闇に印を増やしても意味がない。
まずは全体を見ないといけない。
私は周囲を見上げた。
「頂上まで行きましょう」
巡察隊は小高い山を登り始めた。
しばらくして頂上へ到達する。
そこは見晴らしが良かった。
そして――
「……ここね」
曖昧国境線。
私達の測量でも、旧地図でも。
国境が曖昧になっている場所だ。
私は遠くを見渡した。
確か。ゆきちゃんが言っていた。
「村があるって言ってたわよね」
それらしい村は見えない。
草原。林。丘。それだけだ。
私は護衛にも確認する。
「見える?」
騎士達も周囲を見渡す。
「いえ……」
「村らしき物は見当たりません」
私は首を傾げた。
「おかしいわね」
距離があるのか。丘に隠れているのか。
それともまだ到達していないのか。
その日はそこで野営する事になった。
夜。
私は移動式無線機を立ち上げアンテナを伸ばす。魔石電源を接続。スイッチ。
「こちらフジ」
雑音。
ザー……。
「こちらフジ」
……反応なし。
私はダイヤルを調整する。
聞こえるのは雑音だけだった。
「まだ来てないか」
予定通りなら、そろそろのはず。
地形。距離。移動速度。
多少のズレはあり得る。
私は肩をすくめた。
「まあ仕方ない」
ふと私は思い出した。
「あ」
そう言えばゆきちゃんに言い忘れていた。
もう一つ切り札。
私は箱を開けた。
中から取り出す。
「てってててん!」
私は思わず声に出してしまう。
十年式倉号拳銃。
……いや。
これはそのまんまだ。
異世界型と言うほどでもない。
私は苦笑する。
「まあいいか」
弾薬も大量に持ってきている。
そして今回は普通の弾ではない。
改良した発光弾。夜空で光る弾だ。
私は銃を空へ向けた。
「よし」
ぱん!
薬莢を排出。
ガチャ。
ぱん!
ガチャ。
夜空に、光が走る。
一瞬の閃光。私は頷いた。
「うんうん」
かなり明るい。
夜なら相当遠くからでも見えるはずだ。
私はもう一度空を見上げた。
「これなら……」
かなり離れていても。
夜なら気付くかもしれない。
私は銃を下ろした。
そして小さく笑う。
「気付くかな?」
もしゆきちゃんが近くにいれば。
この光を見ているかもしれない。
静かな小高い山。
その上で私は夜空を見上げていた。




