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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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染み渡る改革

巡察の旅は、思っていたよりも順調だった。

馬車の中で私は窓の外を眺める。

揺れはそれほど大きくない。

この辺りの街道は、既に整備が進んでいるからだ。


「……悪くないわね」


護衛の騎士が頷く。


「この辺りは領都に近いですから」


なるほど。確かに、街道の状態は良い。

馬車も安定して進んでいる。


ただし――問題が無いわけではない。

私は記録帳を開いた。


「この橋は補強が必要ね」


「こちらの排水路も」


雨が降れば崩れそうな箇所。

馬車がすれ違えない細い道。

水が溜まりやすい低地。

問題はいくらでも見つかる。


それを指摘したからといって、すぐに直るわけではない。


私は小さく息を吐いた。


「実際に動くのは数ヶ月先ね」


文官が頷く。


「はい」


結局のところ物も、金も。

動くには時間が掛かる。


資材。労働力。許可。


全部揃って初めて工事が始まる。

すぐに全部を直す事など出来ない。

人手にも限界がある。

お父様も言っていた。


効率化は進んでいる。

余裕も少しずつ生まれている。


だが――限界はある。

私は窓の外を見ながら言った。


「焦っても仕方ないわね」


改革とは、時間の掛かるものだ。

これが領地全体へ染み渡れば。

間違いなく足腰の強い領地になる。


それは確信している。


馬車は次の村へ到着した。

村人達が少し緊張した様子で迎える。

私は馬車から降りた。


「井戸は?」


「こちらです」


私は井戸を覗く。


深さ。水量。周囲の状態。


そして指示を出す。


「滑車を追加」


「排水溝を作る」


「肥料の配合を変えて」


文官がすぐに書き留める。


私は続けた。


「この畑は畝を変えた方がいい」


「こちらの小屋は風通しを」


改善点を一つずつ出し文官へ書類を渡す。

そしてそれが領都へ送られ。


決済され。


ようやく動き出す。


遠回りだ。


それが行政というものだ。

今回の巡察の目的は一つ。

生産力を高める事。


私はスキルを使いながら、問題点を見つけていく。


資材。構造。効率。

改善点はいくらでも見える。


最近、少し変わってきた事がある。


私は文官達を見た。


彼らは村人と話しながら、何かを書き込んでいる。

そして私の所へ来て言う。


「お嬢様、こちらの畑ですが」


「土の水はけが悪い様です」


私は少し笑った。


「そうね」


以前なら全部、私に聞いていた。

だが今は違うし彼ら自身が考え。

改善点を見つけそして実行する。


私は小さく頷いた。


「それでいいわ」


私一人では、領地は回らない。

皆が考えるようになれば領地は自分で回り始める。


私は村の畑を見ながら呟いた。


「いい感じね」


改革は、少しずつ広がっている。

静かに。確実に。

この領地は、変わり始めていた。

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