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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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現場百回

私は設計図を見ながら、ふと手を止めた。

移動研究馬車。無線機。観測装置。

全部、設計は順調だ。


だが――私は小さく呟いた。


「……待てよ」


もし完成しても外出許可が出なかったら?

意味がない。

今までは領都周辺の視察だけ。

護衛付きとはいえ、遠出はしていない。


国境。村。測量隊。


そこへ行くには、正式な許可が必要だ。

私は椅子から立ち上がった。


「……先にこっちをやっつけるか」


向かう先は一つ。父の執務室。


――コンコン。


「入れ」


扉を開けると父は書類を見ていた。

私を見ると、少し眉を上げる。


「どうした?」


私は迷わず言った。


「お父様」


父はペンを置いた。


「今すぐとは言いません」


「いつの日か、領内の各村々も見てみたいです」


父は少し驚いた顔をした。


「突然だな」


私ははっきり言う。


「現場を見ないと納得出来ません!」


領都。街道。市場。色々見てきたが領地はそれだけではない。


村。農地。山。川。


そこを知らなければ、本当の領地運営は出来ない。


父はしばらく黙っていた。

そして静かに私を見る。


確かに、娘の言っている事は正しい。

領主は現場を見るべきだ。

報告だけでは分からない事がある。


しかしまだ五歳。


普通なら屋敷で育てる年齢だ。

父は思い出す。


電灯。水道。農業改善。産業。


結果は、誰の目にも明らかだ。


これは……父は小さく息を吐いた。


親として見るべきか。

それとも領主跡取りとして接するべきか。

答えは、もう出ていた。

父はゆっくり口を開いた。


「条件がある」


私は身を乗り出した。


「はい!」


「護衛は必ず付ける」


「はい!」


「予定表を提出する」


「はい!」


父は頷いた。


「それが守られるなら、許可する」


私は一瞬固まった。


そして。


「やったー!」


思わず声が出た。

父は苦笑する。


「まだ子供だな」


私は慌てて姿勢を直す。


「失礼しました!」


父は小さく笑った。


だがその目は少し真剣だった。


この子は普通の子供ではない。


領主として育てるならいつかは現場を見る必要がある。


父は静かに言った。


「準備が出来たら知らせろ」


「はい!」


私は元気よく答えた。

そして執務室を飛び出す。

廊下を走りながら、私は思わず呟いた。


「よし!」


これで行ける。


村。測量。国境。


そして――いつか。


ゆきちゃんの近くまで私は小さく笑った。

準備は整い始めている。


世界は、少しずつ動き始めていた。

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