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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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土を強くする

私は机の上に図面を広げていた。

新しい計画。私専用の馬車。


ゆきちゃんとの通信で話した通り、移動用の研究馬車を作るつもりだ。


普通の馬車ではない。


長距離移動でも揺れが少ない構造。

装置を積んでも壊れない構造。

私はペンを走らせながら呟いた。


「重心は低めがいいわね」


荷台を少し広く。車軸は太く。

荷物が安定する様にする。


そして――


「サスペンションも入れておこう」


この世界の馬車は、とにかく揺れる。

長距離移動には向かない。

板バネを入れればかなり改善出来る。

私は設計図に簡単な構造を書き込んだ。


「うーん……」


少し考える。


「エンジン……」


もし蒸気機関があれば。いや。燃料が無い。

石炭の鉱脈は確認されていない。

蒸気機関はまだ早い。

私は小さく首を振った。


「今は馬車に集中ね」


出来る事から。

文明は段階的に進めるものだ。


その時だった。扉が勢いよく開いた。


「お嬢様!」


文官が少し興奮した様子で入ってくる。


「どうしたの?」


私は顔を上げた。

文官は紙を差し出す。


「化学肥料という物が完成しました!」


私は思い出した。


「あー」


確かに。農業強化の一環で、配合を書き渡していた。

前世の知識を頼りにした簡易肥料。


家畜糞。灰。硝石。


いくつかの材料を混ぜて作る。

この世界でも作れる範囲の物だ。


「試験結果は?」


文官が頷く。


「作物の成長が明らかに良いとの事です」


私は笑った。


「それは良かった」


農業。食料。すべての基礎。

人口。兵士。労働力。


全部そこから始まる。

私はすぐに言った。


「早速、各農家に分配して」


「使用量には注意してね」


肥料は入れすぎると逆効果だ。

土が壊れる。その辺りはきちんと伝えないといけない。


文官は頷く。


「解りました。通達します」


彼はすぐに部屋を出て行った。

私は椅子に座り直す。

机の上には、馬車の設計図。

そして農業の報告書。


私は小さく笑った。


「これでまた生産力が上がるわね」


食料が増えれば人口が増える。

余剰労働力が生まれる。

産業が広がる。文明は少しずつ強くなる。

私は再び図面を見る。


移動研究馬車。


いつか国境付近まで行く為の物。

私はペンを手に取った。


「さて」


やる事はまだまだある。

文明は、一日では変わらない。


一歩ずつ。確実に。

この領地は強くなっている。


そしてその変化は――


やがて世界にも影響を与える事になる。

私はそう確信していた。

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