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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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境界の鉱石

測量が始まってから数週間。

領地の地図は少しずつ形を成してきていた。

研究室の机の上には、何枚もの地図が広げられている。


領都周辺。街道沿い。農村部。


測量隊が作り上げた図面は、今までの曖昧な地図とは別物だった。


私はそれを眺めながら、小さく頷いた。


「……見えてきたわね」


文官も感心している。


「街道の流れがはっきりしました。物流の計画も立てやすくなります」


地図は力だ。道路。川。村。丘。


それらの位置が正確になるだけで、領地の運営は格段にやりやすくなる。


その時だった。


扉がノックされた。


「失礼します!」


測量隊の記録係が、慌てた様子で入ってきた。

服は土で汚れ、息も少し荒い。


「どうしたの?」


私は顔を上げた。

彼は一枚の報告書を差し出す。


「国境付近の測量中に……発見がありました」


私は報告書を受け取る。


紙には簡単な地図と、いくつかの記述が書かれている。


私は読み進めた。そして、手が止まる。


「……鉱石?」


記録係が頷いた。


「はい。丘の斜面で露出している岩を確認しました」


私は机の上に報告書を広げる。


測量地点。丘の位置。国境線。


すぐに理解した。


「場所は?」


文官が問いかける。


「国境から約一キロほどです」


部屋が静かになる。

私は椅子に深く座り直した。


「……種類は?」


記録係が答える。


「現地にいた鍛冶職人が確認しました」


彼は少し声を落とした。


「鉄鉱石です」


文官が息を呑む。


鉄。武器。農具。工具。建築。


すべてに必要な資源。

領地にとって、最重要資源の一つだ。

私はもう一度報告書を見る。


丘の斜面。露出した岩。


そして国境から一キロ。


私は小さく呟いた。


「……嫌な場所ね」


文官が苦笑する。


「ええ」


先日の測量で分かった事。

この地域の国境線は曖昧だ。


旧地図は不正確。


測量結果では、最大で二キロほどズレている。


つまり。この鉱脈。どちらの領地なのか――

はっきりしない。


私は指で地図の線をなぞった。

もしこの鉱山が大きければ隣国が気付けば。


領地問題。外交問題。資源問題。


すべてが一気に動く。

私はゆっくり息を吐いた。


「とりあえず」


私は記録係に言った。


「この話はまだ外に出さない」


彼は力強く頷いた。


「採取した石はあります」


彼は布に包まれた石を差し出した。

私はそれを受け取るとずしりと重い。

黒く光る部分が見える。


私は石を机に置いた。


「……本物ね」


文官が静かに言った。


「どうされますか」


私は少し考えた。


そして無線機を見た。


夜の三の刻。通信の時間。

私は小さく笑った。


「まずは相談ね」


この鉱山。私だけの問題ではない。

国境の問題だから。

私は石を見ながら呟いた。


「地図を作ると」


世界の姿が見える。


そして時々こういう“宝物”も見つかる。

宝物は同時に――争いの種にもなる。


私は静かに言った。


「……さて」


この鉱山。どう扱うか。


それは――今夜、ゆきちゃんと決める事になりそうだった。

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