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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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線の向こう側

測量が進み、地図は少しずつ形を成してきた。

大量の人手を投入したおかげで、領地の動線が段々と見えてくる。


街道。川。村。丘。


今までぼんやりしていた領地が、線と数字で整理されていく。

私は完成途中の地図を机の上に広げた。


「……見えてきたわね」


文官が頷く。


「はい。特に街道の流れが分かりやすくなりました」


領都から放射状に伸びる道。

市場へ続く道。農村へ向かう道。

物流の流れがはっきり見える。

やはり地図は強い。計画が立てられる。


私は指を東へ滑らせた。


「……国境」


あの線。

その向こうに――ゆきちゃんがいる。


実感はまだ薄いが無線では毎日話している。

実際の距離は遠い。

地図の上で見ればなおさらだ。

私は国境付近をじっと見る。

小さな村がポツポツとある。

街道から少し外れた場所。


農村。牧草地。小さな集落。


「ここが一番近いわね」


私は一つの村を指差した。

領都から見て、国境へ一番近い。

とはいえ。


「……ここからゆきちゃんの所が近いとも限らないのよね」


国境線は長い。

向こうの領地がどこまで広がっているかは分からない。

もしかしたら、かなり離れている可能性もある。


私は椅子に座り直した。


「何か理由を付けて国境近辺に行きたいわね」


文官が苦笑する。


「伯爵様が許されるでしょうか」


……微妙。


今の所、私は領都中心の活動。

移動中に魔物も出る可能性もあるし政治的にも敏感。


簡単には行けない。

私は小さく息を吐いた。


「まあ、急ぐ話じゃないけど」


だが。


いつか必要になる。私はふと無線機を見た。

今使っているのは固定型。

研究室に据え付けで長距離通信向け。


もし国境へ行けたら?接触するには持ち運び型がが必要。

私は机に紙を引き寄せた。


「……作るか」


新しい通信機。

設計を頭の中で組み立てる。

小型化。出力抑制。移動可能。

馬車に積めるサイズ。


私は思わず呟いた。


「九四式四号丁無線機」


もちろん――


異世界型。


前世の構造をベースに、魔石電源へ置き換える。


通信距離は短くていい。

二十キロ程度。それだけ飛べば十分。

国境付近まで行けば、通信可能。

私はペンを走らせた。


木製筐体。魔石電源。折り畳みアンテナ。

調整ダイヤル。振動対策。馬車固定器具。


これなら移動出来る。


「ふふ」


思わず笑ってしまう。


今はまだ遠いが国境の向こう。

技術は距離を縮める。

私は図面を完成させた。


「よし」


文官へ渡す。


「工房に回して」


「承知しました」


いつか国境近くで。直接話す日が来るかもしれない。


私は地図をもう一度見た。

細い線。その向こう側。


「待ってなさいよ、ゆきちゃん」


距離はまだあるが確実に、近づいている。

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