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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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夜を待つ

ここ数日、私は領都を見回り続けていた。

水道局の配管進捗。

発電機の増設状況。

工房の効率。

市場の動線。

気付いた改善点を、その場で指摘。

記録係が走り書き。文官が整理。

数日後には修正完了。


結果は、はっきり出ている。


市場の滞留時間短縮。

搬入効率向上。水汲み時間削減。

作業量増加。


数字で見ても明確。

領都は、確実に変わり始めている。


そして――その噂は外へ広がった。


「他の村からも、直接見て欲しいと要請が来ています」


文官が報告する。


「村々から?」


「はい。領都へ向かう主要村だけでなく、さらに外側からも」


成る程。


間接的には制度を導入している。

水道簡易型。照明簡易型。

作業効率改善手順。


成果はいまいちらしい。


現場に私が居ないし細部の詰めが甘い。

適材適所の判断がズレる。

仕組みは伝わるが、思想が伝わらない。


私は腕を組む。


「直接行った方が早いわね」


文官は苦笑する。


「伯爵様が引っ掛かっておられます」


「安全性?」


「はい。お嬢様はまだ五歳でございます」


確かに。護衛を付けても、村々巡りは負担が大きい。距離もある。国境も近い。

魔物もいる。


お父様の懸念は理解出来る。

変革は現場から。


私は小さく息を吐く。


「もう少し基盤が整ってから、ね」


今は焦らない。

領都を完全に仕上げる。

モデルケースを完成させる。


それから拡張。その方が安全で確実。


私は空を見上げる。日が傾いている。

そろそろ夜。


……そう言えば。


例の物。送った無線機。

荷馬車での往復距離。商人の速度。

組立時間。


理論上、そろそろ完成していてもおかしくない。


もし順調なら今日辺りから、試験電波が飛ぶ可能性。胸が少し高鳴る。私は館へ戻った。

誰もいない部屋。


机の上。組立済みの無線機の異世界型。

私は椅子に座る。

魔石バッテリー接続。

アンテナ展開。

周波数ダイヤルを指定位置へ。


夜の三の刻。まだ少し早い。


私は静かに待つ。

窓の外は、ゆっくり暗くなっていく。


領地は順調。制度は回り始めた。


奴隷配置も安定。水道局稼働。

発電増設。基盤は整いつつある。


国境の向こう。


そこに、もう一つの戦記。

もし、電波が届けば。


手紙の時間差は消える。


私はダイヤルに指をかけたまま、目を閉じる。


「……ゆきちゃん」


雑音。

まだ、何も聞こえない。


今日は待つ。

この装置の前で夜を待つ。

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