表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
359/373

揺らぐ認識

領都。宿屋。


王都から来た商隊を装う偵察隊は、それぞれの部屋へ荷物を置き、一室へ集まっていた。

隊長は机の上へ地図を広げる。

誰も口を開かなかった。

ようやく一人の隊員が沈黙を破る。


「隊長」


「何だ」


「一体どうなっているのですか?」


隊長は苦笑した。


「そう聞かれても、俺にも分からん」


大きく息を吐く。


「王都で聞かされていたのは反乱。そして未知の乗り物の存在。あの鉄の箱……ロイドとかいう乗り物は確かに見た」


部下も頷く。


「私も見ました。ですが、それ以上に驚いたのは領都です。領民は落ち着いております。治安隊も規律を守り、住民と普通に接しています。街も荒れていません。反乱が起きている都市には、とても見えません」


隊長は腕を組んだ。


「……ああ」


それが一番理解出来なかった。

もっと混乱していると思っていた。


略奪。暴動。住民の不満。


そういう光景を想像していた。

しかし実際は違う。

市場は賑わい。商人は商売を続け。

子供達は笑っている。


「何かがおかしい」


その時だった。


「隊長」


別の隊員が声を掛けた。


「何だ」


「最初に偵察へ出たレーツェル隊長の件、ご存じですか?」


「ああ」


隊長は頷く。


「報告書は読んだ。洗脳されたとか、懐柔されたとか、色々噂になっていたな」


隊員は首を横に振る。


「いえ。私はレーツェル隊長とは士官学校の同期です」


隊長が顔を上げる。


「王都を出る前に、少しだけ話を聞きました」


部屋が静かになる。


「何を聞いた?」


隊員は言葉を選びながら話し始めた。


「王都では旧南国が反乱を起こしたとされています」


「ですが、レーツェル隊長の話では違いました」


隊長は身を乗り出す。


「どういう事だ」


「発端は王国軍です」


「王国軍?」


「はい。この地方へ派遣されていた一部の徴発隊が、命令を無視して小さな村で強制徴発を繰り返したそうです」


隊長は目を見開く。


「本当なのか」


「レーツェル隊長はそう言っていました」


「その結果、村人は生活出来なくなり、この領地へ保護を求めた。そして旧南国側は、それ以上の徴発を止めるために徴発隊と交戦した」


部屋の空気が重くなる。

隊長はゆっくり椅子へ腰を下ろした。


「つまり……」


誰も言葉を続けない。

隊員が静かに答えた。


「仕方なく反旗を翻した」


「それがレーツェル隊長の見立てです」


隊長はしばらく黙っていた。

やがて小さく呟く。


「……こちらから仕掛けたと思われているのか」


「はい。少なくとも旧南国では、その認識です」


誰も口を開かなかった。

もし、それが事実なら王都で聞かされてきた話と。

目の前で見ている現実は、あまりにも違い過ぎる。


隊長は窓の外を見つめる。

穏やかな領都の夜。笑い声が聞こえる市場。

規律正しく巡回する治安隊。


「まだ判断は出来ん」


隊長は静かに立ち上がる。


「だが。自分達の目で見た事実だけは、そのまま王都へ持ち帰ろう」


部下達は静かに頷いた。


この夜。

王都から来た偵察隊の中で、旧南国に対する認識は、少しずつ変わり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ