違和感だらけの領都
「こちら偵察隊」
無線機から声が響く。
「対象は領都郊外へ到着。これより治安隊へ引き継ぐ」
『了解!こちら治安隊。対象を捕捉』
『以後はこちらで監視を継続します』
「頼みます」
通信を終えたロイド偵察車は街道を離れ、静かに監視地点へ戻って行った。
その頃。
王都から来た商隊は領都へ入っていた。隊長は周囲を見渡し、小さく眉をひそめる。
「ここが……反乱軍の拠点か?」
部下も同じように周囲を見回した。
市場には人が溢れ。
商人達が客を呼び込む声が響く。
子供達は笑いながら走り回り。
治安隊は住民と笑顔で言葉を交わしている。
どこにも戦乱の空気は無かった。
「隊長」
「何だ」
「領民は普通に生活しています」
隊長は黙って頷く。
食料も並んでいる。
決して豊富ではない。
それでも不足している様子は見えない。
値札を見ても価格は大きく乱れていなかった。
「徴発が行われた地域とは思えんな」
部下も困惑していた。
「聞いていた話と全く違います」
「反乱軍に支配された都市なら、もっと混乱しているはずでは……」
隊長も同じ疑問を抱いていた。
門では簡単な確認だけで通された。
街中でも誰一人として自分達を怪しむ様子はない。
「……妙だ」
隊長は小さく呟く。
「尾行されている気配も無い」
「監視も見当たりません」
部下も周囲を見渡す。
「宿を探そう」
「まずは情報収集だ」
「はい」
二人は歩き始めた。
その途中だった。
ゴォォォ……
聞き慣れない音が街の向こうから近付いて来る。
「何だ?」
人々は驚く様子もなく道を空けていく。
やがて姿を現したのは、大きな鉄の箱だった。
車輪を回しながら、ゆっくりと街中を走っている。
「……あれが」
部下が目を見開く。
「ロイド……ですか」
隊長も息を呑む。
荷台には木箱が積まれ、数人の治安隊員が護衛についている。
馬も使っていない。
それなのに、自ら走っている。
「信じられん……」
ロイドはそのまま駅の方向へ走り去っていく。
隊長はしばらく立ち尽くしていた。
反乱軍。
そう聞いていた。だが目の前にあるのは違う。
秩序があり、物流があり、人々の暮らしがある。
そして、自分達の知らない技術まで存在している。
「何がどうなっている……」
隊長は思わず呟いた。
旧南国。
その実態は、王都で聞いていた話とはあまりにもかけ離れていた。




