積み重なる力
朝、領都郊外。
訓練場には朝早くから大勢の志願者が集まっていた。
「整列!」
教官の声が響く。
新たに編成された治安隊。
その隣では地下都市から来た教官達が並んでいた。私は訓練の様子を見学している。
「思ったより集まったわね」
副官が頷く。
「志願者は予定の一・五倍です」
「市民からの支持も依然高く、毎日のように希望者が来ています」
私は小さく笑った。
「嬉しい悲鳴ね」
その時、一台のロイドが訓練場へ入って来る。
「今日から操縦訓練を開始します!」
教官が大きな声で説明する。
志願者達が一斉にロイドを見る。
「これが……噂のロイドか」
緊張と期待が入り混じった表情だった。
教官は車体を叩く。
「焦る必要は無い!」
「まずは動かし方を覚えろ!」
「故障させない事も立派な仕事だ!」
「はい!」
威勢の良い返事が響く。
私はその様子に満足そうに頷いた。
その隣では別の訓練も始まっていた。
「分解!」
机の上にはL6が並べられている。
「組み立て!」
兵士達が一斉に作業を始める。
地下都市の教官が歩きながら確認していく。
「急ぐな!」
「確実に覚えろ!」
武器は撃つだけではない、整備も重要だ。
その考えは少しずつ浸透し始めていた。
さらに奥では機動歩兵の訓練。
隊列を組み。合図一つで散開。再集合。
連携を繰り返している。
私は副官へ向いた。
「順調ね」
「はい」
「まだ始まったばかりですが、飲み込みは早いようです」
私は頷いた。
これなら間に合う。
その時だった。
「お嬢様!」
鉄道局の技師が駆け寄って来た。
「どうしたの?」
「複線化工事の報告です!」
私は思わず笑みを浮かべる。
「聞かせて」
技師は地図を広げた。
「領都・地下都市間ですが、単線運用を維持したまま複線化工事を開始しました!」
「運行を止めずに?」
「はい!」
技師は嬉しそうに説明する。
「片側を運行させながら、もう一方を建設しております」
私は感心した。
「上手く考えたわね」
「ありがとうございます!」
技師はさらに続ける。
「橋梁やトンネルは将来を見越して最初から複線幅で建設してあります!」
副官が驚く。
「だから工事が早いのか」
「はい!」
技師は力強く頷いた。
「線路を一本追加するだけですので、通常より遥かに短期間で完成します!」
私は地図を見ながら静かに呟く。
「未来への投資が、ようやく実を結び始めたわね」
鉄道。通信。備蓄。訓練。
どれも一日では出来ない。
だからこそ時間を稼ぐ必要があった。
そして今、王国と帝国が動きを止めている間に、旧南国は静かに力を蓄え続けていた。
その力はまだ誰にも見えないが確実に、旧南国の土台となって積み重なっていた。




