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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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備える時間

領都。旧南国臨時政府庁舎。

私は報告書を一枚ずつ確認していた。


「偵察隊からは?」


通信士が答える。


「現在のところ、大きな動きは確認されておりません」


私は頷く。


「そう」


静か過ぎる。王国も。帝国も。まるで様子を窺っているようだった。


「上手くいってるのかな……」


副官が首を傾げる。


「噂の件ですか?」


「ええ」


私は地図を眺める。


「まだ疑っているのか?それとも軍を動かす準備に入ったのか?判断は出来ないわね」


しばらく考えた後、私は顔を上げた。


「まあいいわ。相手が止まっているなら、その時間を使うだけよ」


副官が頷く。


「何を優先しますか?」


私は迷わず答えた。


「鉄道」


地図の一本の線を指差す。


「領都まで開通した以上、今度は備蓄を進める」


「食料、弾薬、燃料、全て鉄道輸送へ切り替えて」


「はっ!」


私はさらに続ける。


「同時に複線化工事も進めるわ」


技師長が頷く。


「既に資材の輸送を開始しております」


「複線になれば輸送能力は大幅に向上します」


「期待してるわ」


その時、別の文官が報告書を持って来た。


「お嬢様」


「何?」


「領都の志願者です」


私は目を通す。思わず笑みが浮かんだ。


「また増えたの?」


「はい」


「市民からの支持も依然として高く、治安隊への志願者も増加しております」


私は報告書を閉じる。


「ありがたいわね」


支持がある。だからこそ人も集まる。

副官が尋ねる。


「志願者はどうされますか?」


私は少し考えた。


「全員を前線へ送る必要は無いわ」


「一部は治安維持。残りは教育へ回しましょう」


「教育ですか?」


「ええ」


私は頷く。


「くろがね、ロイド、L6」


「運転と整備、それに基本的な武器の扱いを覚えてもらう」


副官が感心したように頷く。


「将来を見据えた育成ですね」


「そういう事」


戦争は兵だけでは続けられない。


操縦する者。整備する者。補給する者。

全て必要になる。

私はさらに地図へ目を向ける。


「地下都市から来た部隊も整理しましょう」


文官が筆を構えた。


「編成をお願いします」


私は順番に指示を出す。


「ロイド、L6を主力とする部隊は機甲部隊」


「くろがねと歩兵を中心とする部隊は機動歩兵」


「そして、この世界の武装を扱う者達は治安隊として再編成」


文官が書き留めていく。

副官が確認する。


「役割を明確にするのですね」


「ええ」


私は頷いた。


「それぞれの役割をはっきりさせた方が、いざという時に動きやすいもの」


「訓練も効率が上がるわ」


通信士が敬礼する。


「直ちに各部隊へ伝達します!」


「お願い」


私は窓の外へ目を向けた。

駅では貨物列車への積み込みが続き。

領都ではロイドが行き交う。

訓練場では新しく志願した治安隊員達が整列していた。


王国も。帝国も。今はまだ動かない。


ならば、その時間を最大限に使う。

一日でも多く。一両でも多く。一人でも多く。

積み重ねたものが、いずれ旧南国を守る力になる。


私は静かに呟いた。


「焦る必要はないわ」


「備えられる時に、備えるだけよ」

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