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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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348/365

帰還する使者

ロイドは街道を走っていた。

荷台に揺られながら、レーツェルは外を見ている。


旧南国。


捕虜になってから見たものは、どれも王国の常識とは違っていた。


組織化された村。ロイド。印刷所。


そして領主の娘。

思い出すだけで頭が痛くなる。

その時、隣の護衛兵が言った。


「到着です」


レーツェルは顔を上げた。


国境だった。部下達も周囲を見る。

王国側の見慣れた風景。

確かに国境だ。


だが意味が解らない。


「何故ここへ?」


護衛兵は当然のように答えた。


「お帰りいただきます」


レーツェルは固まった。


「……は?」


部下達も固まる。護衛兵は続けた。


「お嬢様の命令です」


「帰れと?」


「はい」


レーツェルはしばらく言葉を失った。


捕虜だ。それなのに返す?

意味が解らない。


その時、別のロイドが到着する。

そこから私も降りて来た。


「おはよう」


まるで散歩の途中だった。

レーツェルは頭を抱える。


「何故だ」


「何が?」


「何故帰す」


私は少し考えた。そして答えた。


「伝えて欲しいから」


予想通りの答えだった。

だが、予想以上に面倒な答えでもあった。


「何をだ?」


私は国境の向こうを見る。


王国の方角。


そして静かに言った。


「旧南国は戦争を望んでいない」


レーツェルは黙って聞く。


「徴発を止めて欲しい。民を守りたい。それだけよ」


しばらく沈黙。

そして私は続ける。


「でも」


その言葉で空気が変わった。


「準備は終わってる」


レーツェルは思わず苦笑した。

知っている。見た。


通信網?ロイド。組織化された村。補給網。

そして兵士達。確かに終わっている。


少なくとも辺境領主の準備ではない。

私は封筒を差し出した。

王都宛の書状だった。


「これを届けて」


レーツェルは受け取る。


ずしりと重い。

紙の重さではない。意味の重さだった。


「俺が断ったら?」


私は笑った。


「その時はその時」


「酷いな」


「そう?」


二人とも少し笑った。

その後、私は真面目な顔になる。


「レーツェルさん」


「何だ?」


「王都は私達を誤解している」


レーツェルは否定しなかった。

その通りだからだ。


「だから見たままを伝えて」


「盛るな、削るな、そのまま」


レーツェルは小さく息を吐く。

簡単なようで難しい。

だがそれが一番正しい気もした。


「解った」


私は満足そうに頷いた。


「ありがとう」


その言葉にレーツェルは苦笑する。


捕虜を解放して礼を言う。

やはり変な女だった。ロイドが離れていく。

国境の向こうへ向かうレーツェル達。

部下の一人が小声で聞いた。


「隊長」


「何だ」


「報告しますか?」


レーツェルは即答した。


「する」


そして少しだけ空を見上げる。


「信じてもらえるかは別だがな」


部下達が苦笑した。

それは確かにそうだった。

通信網?がある。ロイドがある。

領主の娘が反乱を率いている。

捕虜を返してきた。

どれも信じ難い話ばかりだ。


だが全部事実だった。


レーツェルは書状を握り締める。

王都へ戻れば忙しくなるだろう。

恐らく誰もが驚き、あるいは笑う。


だが少なくとも自分は知っている。

旧南国はもう昔の旧南国ではない。


そしてあの領主の娘は、王国が考えているより遥かに危険な相手だという事を。

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