鉄の馬
「移動?」
レーツェルは聞き返した。
朝食を終えた直後だった。
見張り役の兵士が頷く。
「はい」
「別施設へ移送します」
部下達が顔を見合わせる。
ついに牢屋か?あるいは尋問施設か?
そんな事を考える。
しばらくして建物の外へ出る。
その瞬間、全員が足を止めた。
「何だ……あれは」
そこに並んでいたのは数台のロイドだった。
ゴォォォ……
低い音を響かせている。
馬も居ない。なのに動いている。
若い兵士が呟く。
「魔導具か?」
「知らん」
レーツェルも知らなかった。
噂は聞いていた。
だが実際に見るのは初めてだった。
その時、護衛兵が言う。
「乗って下さい」
「これにか?」
「はい」
当然のような返事。
レーツェル達は恐る恐る荷台へ乗り込む。
座席まで付いている。意味が解らない。
その時、ロイドが動き出した。
ゴォォォ……
若い兵士が声を上げる。
「うおっ!?」
車体が前へ進む。どんどん進む。
馬車より速い。
遥かにしかも揺れが少ない。
部下達が顔を見合わせる。
「隊長」
「ああ」
「これ何なんです?」
レーツェルは苦笑した。
「俺が聞きたい」
ロイドは街道を走り続ける。
途中。通信線の横を通る。
中継所?も見える。村々には倉庫。見張り台。
訓練中の兵士。どこも妙に組織立っていた。
若い兵士が呟く。
「反乱軍……なんですよね?」
誰も答えられない。
その時、対向から別のロイドが来た。
荷台には木材。
更に後ろには燃料らしき樽。
物流まで動いている。
レーツェルは頭を抱えた。
王都の連中は、絶対に理解していない。
何も本当に何も。地方反乱。辺境の騒ぎ。
そんなものではない。
通信網。ロイド。組織化された行政。補給網。
そして統制。
レーツェルは走る景色を見ながら呟いた。
「不味いな……」
「何がです?」
部下の問いに答える。
「王都は相手を見誤っている」
それだけだった。




