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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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捕虜の見た旧南国

王国軍調査隊隊長であるアランは窓の外を眺めていた。

捕虜になって三日。

だが、未だに現実感が無い。


「隊長」


部下が近付いて来るのは、同じく捕虜だ。


「どうした?」


「飯です」


差し出された皿を見る。

温かい。しかも量も多い。

レーツェルは、ため息を吐いた。


「本当に捕虜か俺達は」


部下も苦笑する。

三日前、森で包囲された。完全降伏。

その後、処刑になると思った。


だが実際は違った。武器は没収された。

監視も居る。逃げられない。

そこは間違いない。


しかし飯は出る。寝床もある。

怪我人は治療された。何なら風呂まである。

意味が解らない。


「隊長」


若い兵士が声を潜める。


「俺達」


「ん?」


「本当に敵なんですかね」


レーツェルは苦笑した。

その疑問は自分も持っている。

その時だった。窓の外に、何かが通った。


ゴォォォォ……


大きな音。アラン達が振り向く。


「あれは……」


鉄の塊。見た事がある。

いや。正確には見た事が無い。噂だけ聞いた。


「ロイドって呼んでるやつか?」


部下達も窓へ集まる。ロイドが走っていく。

荷物を積んで、しかも一台ではない。


二台。三台。四台。続いていく。


若い兵士が呟く。


「何なんだここ……」


アランも同意だった。

その時、建物の外から声が聞こえる。


「通信線確認!」


「異常無し!」


「次の中継所へ!」


兵士達が走っていく。

レーツェルは眉をひそめる。


通信線?


どういう事だ?あの線で通信が?意味がわからん。その時、さらに外が騒がしくなる。


「印刷物追加五千部!」


「駅へ運べ!」


「列車待機!」


次々と飛び交う声。

レーツェルは頭を抱えた。

訳が解らない。本当に、部下も同じだった。


「隊長」


「何だ」


「これ反乱軍ですよね?」


レーツェルは答えられない。


反乱軍。


そう聞いて来た。だが目の前にあるのは、組織だった行政。


物流。通信。工業。軍。


どう見ても違う。

その時、見張り役の兵士が来た。


「隊長殿」


レーツェルが振り向く。


「何だ?」


兵士は笑った。


「面会です」


「面会?」


「お嬢様が呼んでおります」


アランは思わず苦笑した。

またか。あの領主娘である。

執務室へ通され部屋へ入ると。

娘は、書類の山と格闘していた。


「来たわね」


「呼ばれましたので」


娘は書類から目を離さない。


「あー忙しい」


レーツェルは周囲を見る。

文官。通信士。地図。報告書。

山積みだった。


「反乱は暇じゃないのか?」


思わず聞いてしまった。

まきが顔を上げる。そして真顔で言った。


「反乱だから忙しいのよ」


レーツェルは吹き出した。

確かにそうかもしれない。

まきは地図を広げる。


「聞きたい事があるの」


「何だ?」


「王都」


アランの顔が真面目になる。

まきは続ける。


「今、どれくらい軍を動かせそう?」


やはり来た。軍事情報。

レーツェルは少し考える。

そして答えた。


「正確には知らん」


「だろうね」


「ただ」


アランは地図を見る。


「東へ向かっていた部隊の一部を南へ回す話は出ていた」


まきの目が細くなる。


「規模は?」


「数千から一万程度じゃないか」


副官が書き留める。


娘も頷く。予想通り。

そんな顔だった。


レーツェルは逆に聞いた。


「お前達はどうする?」


まきは笑った。


「さぁ?」


「教えろ」


「嫌」


即答だった。


レーツェルは頭を抱えた。

その様子にまきが笑う。

そして窓の外を見る。


遠くには駅。その先には鉄道。

更にその向こうには旧南国が広がっている。


「でも」


娘は静かに言った。


「戦争は出来れば避けたいわね」


アランは少し驚いた。

反乱を起こした本人が言う言葉ではない。

だが不思議と嘘には聞こえなかった。


そしてレーツェルは思う。


王都の連中は、まだ何も知らない。

この旧南国が既に自分達の知っている辺境ではなくなっている事を。


そしてこの領主娘が、思っていたより遥かに厄介な相手である事を。

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