最初の接触
街道。王国軍調査隊は馬を進めていた。
先頭を行く隊長が地図を確認する。
「次の村までどれくらいだ?」
部下が答える。
「一時間ほどです」
「そうか」
隊長は周囲を見渡した。妙なほどに静かだ。
ここ数日、何ヶ所もの村を回った。
だが成果は無い。
徴発隊の行方も。官僚達の消息も。
何も解らない。住民達も口が重い。
何かを知っているようで、知らないと言う。
その繰り返しだった。
「隊長」
若い兵士が近付いて来る。
「どうした?」
「本当に反乱なんですかね?」
隊長は苦笑した。
「解らん」
正直な答えだった。
「俺達は調べるのが仕事だ」
それだけだった。
その時、先頭の騎兵が手を上げる。
「停止!」
馬が止まる。
全員が前を見る。街道の真ん中。
倒木。
昨日までは無かったはずだ。
隊長が眉をひそめる。
「おかしいな」
その瞬間だった。
森の中から声が響く。
「動くな!!」
全員が振り向く。
左右の森の人影。
一人や二人ではない。次々と現れる。
王国軍兵士達の顔色が変わる。
「何だ!?」
その時、再び声が響く。
「武器から手を離せ!」
静かな声だった。
だが、全員が聞こえた。
隊長が目を凝らす、そして固まった。
相手が持っている武器は、見た事が無い。
長い筒。
そしてこちらへ向いている。
十本。二十本。いや、もっとだ。
「隊長……」
部下の声が震える。完全に包囲されていた。
隊長は周囲を見渡す。
逃げ道は無い。
そして何より、相手の位置が良い。
森。高所。遮蔽物と準備されている。
完全に。
「我々は旧南国治安維持軍である」
再び声。
「武器を捨てて下さい」
「抵抗しなければ危害は加えません」
隊長は息を吐く。
最初から罠だった。
こちらの動きは把握されていたのだろう。
その時、若い兵士が剣へ手を掛けた。
「待て」
隊長が止める。兵士が振り返る。
「ですが!」
隊長は首を振った。周囲を見る。
人数。配置。包囲。そして武器。
勝てない。それだけは解った。
「降伏する」
部下達が固まる。
だが、隊長は冷静だった。
ここで死ぬ意味は無い。
情報を持ち帰る方が重要だ。生きていれば。
だが、その時にはまだ知らなかった。
自分達が持ち帰る側ではなく。
情報を渡す側になる事を隊長はゆっくり剣を地面へ置く。
部下達も続いた。
それを確認すると森の中から兵士達が姿を現す。
統一された装備。統制された動き。
隊長は思わず呟いた。
「本当に反乱軍か……?」
その疑問に答える者はいない。
ただ彼らは理解した。少なくとも王都で聞いていたような、地方の小さな反乱ではない。その事だけは。




