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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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342/358

最初の捕虜

領都。旧南国臨時政府庁舎。

通信室の扉が開く。


「報告!」


私は顔を上げた。


「どうしたの?」


通信士は手元の紙を確認する。


「国境監視隊より報告です!」


部屋の空気が少し引き締まる。


「街道沿いの村へ王国軍の小部隊が入りました」


予想より早い。

私は続きを促す。


「目的は?」


通信士は頷く。


「どうやら数週間前に旧南国へ入った徴発隊及び連絡途絶部隊の行方を調査している模様です」


私は椅子へ背を預けた。


「なるほどね」


副官も腕を組む。


「探しに来たのですか」


「そうでしょうね」


連絡が途絶えた。当然探しに来る。

むしろ来なければおかしい。

私は地図へ視線を落とした。


街道。村。監視所。鉄道。現在位置。


全てが書き込まれている。

副官が聞く。


「どうしますか?」


私は少し考えた。


放置するか。追い返すか。拘束するか。

どれも選択肢だ。


だが、答えは一つだった。


「恐らく」


私は地図を指差す。


「そのうちこっちへ向かって来るわ」


副官も頷く。


「はい」


「なら先に確保する」


部屋が静かになる。

私は続けた。


「街道沿いの人気の無い場所を選定」


「はい」


「対象部隊を拘束」


通信士が急いで書き留める。

私はさらに続ける。


「可能な限り無傷で」


「はっ」


「情報を聞き取る」


「はっ」


「その後、捕虜として保護」


副官が少し驚いた顔をした。


「保護ですか?」


私は頷く。


「捕虜よ」


「殺す必要は無いわ」


むしろ生きていた方が価値がある。

王国軍が何を知っているのか。

王都は何を考えているのか。

今どこまで情報が伝わっているのか。

聞きたい事はいくらでもある。

副官も納得したようだった。


「確かに」


私は立ち上がる。

窓の外、遠く南へ続く空。


「向こうはまだ」


私は小さく笑った。


「自分達が監視されている事に気付いていない」


それが大きい。非常に大きい。

通信士が敬礼する。


「直ちに作戦準備を開始します!」


「お願い」


通信士は駆け出して行った。

部屋には再び静けさが戻る。


その時、別の通信士が入って来た。


「追加報告です」


「何?」


「対象部隊は村で聞き込みを行っております」


私は頷いた。

予想通りだ。


「何か掴んだ様子は?」


「今のところ無いかと」


私は少し安心した。

村側にも事前に通達は出してある。

余計な事は話さない。不審な動きは報告。

徹底されている。副官が地図を見る。


「拘束地点はこの辺りでしょうか」


人気の少ない街道。森に挟まれた区間。

逃げ場は少ない。

私は頷いた。


「そこね」


「包囲して終わり」


「発砲は?」


副官が聞く。

私は首を振った。


「最後の手段」


出来るなら使わない。

相手は調査隊。討伐軍ではない。

まずは話を聞く方が価値がある。


「最初の接触になるわ」


副官も真剣な表情になる。

王国と旧南国の本格的な接触。その始まりだ。

私は地図を見つめながら呟く。


「さて」


「王都は何処まで知っているのかしらね」


その答えはもうすぐ手に入る。

そして街道を進む王国軍の小部隊はまだ知らない。自分達が探している失踪部隊の情報より先に、自分達自身が旧南国の情報源になろうとしている事を。

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