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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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届いた報告

王都の帝国中央庁舎。

その一室では定例会議が行われていた。


戦況。補給。徴発。国境情勢。


いつも通りの報告が続く。

その時だった。


「旧南国方面の定期報告は?」


一人の高官が書類を捲りながら聞いた。

担当官が立ち上がる。

そして少し困った顔をした。


「届いておりません」


部屋が静かになる。

高官が顔を上げた。


「遅延か?」


「恐らくは」


担当官も断言出来ない。

旧南国は遠い。

数日の遅れは珍しくない。

だが、何となく空気が重い。


その時、別の担当官が手を上げた。


「徴発隊ですが」


「何だ?」


「数隊と連絡が取れておりません」


会議室の空気が少し変わる。


「何隊だ?」


「南部方面の三隊です」


「魔物か?」


「可能性はあります」


誰も断言出来ない。

だが、まだこの時点では深刻には考えていなかった。


旧南国の辺境。


何が起きても不思議ではない。

その程度だった。


その時、扉が叩かれる。


コンコン。


会議中の入室は珍しい。

高官が眉をひそめた。


「何だ?」


扉が開く。

一人の伝令官の顔色が悪い。


「緊急報告であります!」


会議室が静まる。


「申せ」


伝令官は書類を差し出した。

震えている。

それを見た高官が嫌な顔をした。


「どうした?」


伝令官は唾を飲み込む。


そして、報告した。


「旧南国方面より避難民が流入しているとの情報」


「何?」


「加えて」


さらに空気が重くなる。


「領都との定期連絡が途絶しております」


沈黙。数秒。

誰も口を開かない。

高官が書類を奪うように受け取った。

内容を読む。

そして眉間に皺を寄せた。


「監督官は?」


担当官が答える。


「不明」


「官僚達は?」


「不明」


「領主は?」


「不明」


部屋が静まり返る。何かがおかしい。

誰もがそう感じ始める。


その時、また別の役人が立ち上がった。


「実は」


全員の視線が集まる。


「商人経由の噂があります」


「噂?」


「はい」


役人は少し言いにくそうにした。

そして、口を開く。


「領主の娘が動いたと」


会議室の数人が笑った。


「馬鹿馬鹿しい」


「小娘一人で何が出来る」


当然の反応だった。

しかし役人は続ける。


「ですが」


「何だ?」


「噂では領都を掌握したと」


今度は笑い声も出なかった。

沈黙。長い沈黙。

そして、一人の老人が口を開いた。

古参の高官だった。


「旗は?」


誰も意味が解らない。


「何の話です?」


老人はもう一度聞く。


「旗はどうした」


役人は慌てて書類を確認した。

そして顔色を変える。


「報告があります」


部屋の空気が凍る。


「旧南国旗が掲揚された模様」


誰も喋らない。

老人はゆっくり目を閉じた。

そして、深く息を吐く。


「まさか……」


誰かが聞いた。


「何かご存知で?」


老人は窓の外を見る。

遠く南の方角を。そして静かに呟いた。


「南国派か……」


その一言で会議室の空気は完全に変わった。

もはや辺境の騒動ではない。

誰もが理解した。

旧南国で起きているのは。単なる反乱でも。

単なる徴発問題でもない。

帝国そのものを揺るがしかねない問題である事を。


そして、王都はようやく事態の異常さに気付き始めたのである。

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