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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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声を積んで

九四式二号丙無線機――異世界型。


それを、ある程度までバラした。

筐体を開き、主要部品を一つずつ外す。


発振部。増幅部。受信機構。アンテナ。

魔石駆動部。


衝撃で壊れやすい部分は個別に布で包み、木箱へ収める。


「随分と、大掛かりでございますな」


商人が苦笑する。


荷馬車二台分。木箱が積み上がる。

照明制御装置の部品、という名目。


工具も同梱。小型旋盤代替治具。

簡易測定器。予備導線。接点。バネ。

予備魔石。

そして、魔石バッテリーも多めに。


これだけあればゆきちゃんなら、間違いなく再組立が可能。


私は最後に、説明書を箱へ入れる。

日本語で。構造図。原理。注意点。

周波数合わせの手順。

発振不安定時の対処法。

魔石出力が揺らぐ場合の再調整方法。


そして最後に一文。


“成功したら、夜の三の刻にこの周波数で呼んで”


私は封を閉じる。


これで終わり後は、待つだけ。


「道中は慎重に」


私は商人に言う。


「承知しております」


国境を越える。交易品として光でもなく。

油でもなく。“声”を積んで馬車がゆっくりと動き出す。


私はそれを見送った。

妙な緊張感が胸にある。


もし途中で検問に引っ掛かれば?

もし部品が壊れれば?

もし彼女が組み立てに失敗すれば?


考えれば不安は尽きない。


信じるしかないゆきちゃんは、エンジニアだ。


前世でも、私より回路設計が得意だった。

むしろ、改良されて返ってくる可能性もある。


私は小さく笑った。

もしこれが上手く行けば。


情報伝達はリアルタイム。

手紙の時間差は消える。国境を越えた会話。


技術共有。政治共有。情勢共有。

これは、革命だ。


王も。軍も。まだ持っていない。


私達だけの、線。

私は空を見上げた。


雲が流れている。あの向こうに、隣国。

そこに、ゆきちゃん。


「さーて」


私は両手を伸ばして背伸びする。


「無事に届いて頂戴よ」


そして成功すれば二つの戦記は、本当に繋がる。


私は館へ戻り待つしかない。

待つ事もまた、戦略。今は、静かに。


国境の向こうからの“声”を待つ。

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