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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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異世界型無線機

九四式二号丙無線機――異世界型。


……完成してしまったわ。

机の上に並ぶ二台の装置。

木製筐体に収められた魔石駆動発振部。

簡易増幅機構。

調整ダイヤル。

折り畳み式アンテナ。


完全再現ではない。


真空管の代替には魔石振動子を使い、周波数安定化はかなり妥協している。


それでも形にはなった。

私は椅子に沈み込む。


「……眠い」


この子供の身体は、夜中には弱々し過ぎる。

まあ、当たり前だけど。

どこの世界に五歳で徹夜連続する子供がいるのよ。

睡眠不足は成長を妨げるわ……。

理性では分かっている。

でも、止まれない。

私は目を擦りながら、最終調整を行った。


魔石出力安定。

発振波形許容範囲内。

受信部感度良好。


さて。実験。文官を呼ぶ。


「こちらへ」


「……これは何でございますか?」


「座って。本を朗読して」


「は?」


説明はしない。

彼を一台の前に座らせ、スイッチを入れる。


「では、この書物を」


渋々読み始める文官。

私はもう一台を持ち、離れた部屋へ移動。


扉を閉める。


距離は数十メートル。まずは近距離テスト。


スイッチ。微かなノイズ。


……そして。


「――王国歴三百二十年……」


聞こえた。少し歪んでいる。


確実に声。


私は思わず笑ってしまった。


成功。電波の減衰や地形影響は未知数。

原理は動いている。私は部屋を出て戻る。

文官が怪訝な顔をしている。


「今のは……?」


「気にしないで」


私は満足げに頷いた。実験は成功。少なくとも近距離では問題無し。


後は、実戦。


……いやその前に。

分解。私は工具を手に取る。

またある程度バラす。

運搬中の破損を避ける為。

そして、構造理解を促す為。

ゆきちゃんなら、読めば分かる。


説明書は日本語で。


組立図。原理。調整方法。

周波数合わせのコツ。

魔石出力の注意点。


破損しそうな部品は多めに。


バネ。接点。導線。予備魔石も少量。

商人経由で送るのは危険か?

いや、商業機械部品として紛れ込ませる。


「新型照明制御装置部品」


そう書けば、誰も深くは調べない。


私は小さく息を吐いた。国境を越える。

今度は、光でも油でもない。


声。


もし成功すれば手紙の時間差は消える。

思考の速度で話せる。


そしてそれは王も、まだ持っていない技術。

私は机に残ったもう一台を見つめた。


これが繋がる日。国境の向こうで。

ゆきちゃんが、同じ音を聞く日。


その瞬間。


二つの戦記は、本当に交差する。

眠気が限界に近い。


私は立ち上がる。


「……今日は寝る」


流石に五歳児に無理は禁物。


文明は一歩、進んだ。国境の向こうへ。

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