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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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王都の中の旧南国

会議が終わった後、執務室には、残ったのは私と監督官だけだった。


珍しく静かだ。


いつもなら文官や副官が出入りしている。

今日は誰も居ない。私は椅子へ深く座った。


そして、前から気になっていた事を聞く。


「ねえ」


監督官は書類から顔を上げる。


「何だ?」


「何でそこまでしてくれるの?」


監督官は少し固まった。


「何の話だ」


「とぼけないで」


私は苦笑する。


「王都へ報告出来たでしょ」


「反乱です!クーデターです!危険です!好きなの選べたじゃない」


監督官は黙る。

数秒。いや。十数秒、沈黙が続いた。


その後、小さくため息を吐く。


「聞きたいのか」


「聞きたい」


即答だった。

監督官は椅子へ深く座る。

そして窓の外を見る。


市場。学校。工場。診療所。


いつもの地下都市、その光景を見ながら言った。


「私も旧南国の生まれだ」


私は固まった。


「……え?」


監督官は苦笑する。


「そんな顔をするな」


「だって」


全く予想していなかった。

本当に、王都生まれだと思っていた。


「驚くな」


監督官は肩を竦める。


「王都には多い」


「多い?」


「旧南国出身者だ」


私は目を瞬かせる。

監督官は続けた。


「商人、役人、職人、軍人、思っているより多いぞ」


「そうなの?」


「そうだ」


即答だった。

私は少し考える。

確かにあれだけ広い地域だった。

居ても不思議ではない。


だが話題になる事は少ない。


その時、監督官は笑った。


「表へ出ないだけだ」


「……」


「出身を語る利点が少ないからな」


妙に納得した。

その時、私は聞く。


「王都で苦労した?」


監督官は少し笑う。


「したな」


即答だった。


「かなり」


その笑顔は、少しだけ寂しそうだった。

私は何も言わない。監督官も続ける。


「だから若い頃は色々やった」


「色々?」


「役人採用、教育制度、登用制度」


私は目を丸くする。

監督官は平然と言う。


「能力があるなら使え、それだけだ」


「……」


「出身地で決めるな、それもな」


私は思わず笑った。

監督官らしい。本当に。


その時、監督官は私を見る。


「だが、勘違いするな」


声が少し真面目になる。


「私は旧南国だから助けた訳じゃない」


「……」


「むしろ嫌いな部分も多い」


即答だった。

私は吹き出しそうになる。

監督官は本気だった。


「立派な人間も居た。どうしようもない人間も居た。北も同じ、王都も同じ」


一拍。


そして静かに言った。


「人間はどこでも変わらん」


部屋が静かになる。

私はその言葉を聞いていた。

監督官は窓の外を見る。


市場を歩く人々、笑う子供達。工場帰りの職人。

その全てを見ながら。


「だから見た」


小さく呟く。


「何を?」


私は聞いた。

監督官は答える。


「人だ」


短い返事だが、妙に重かった。


「地下都市を見た、病院を見た、学校を見た、市場を見た、備蓄を見た、鉄道を見た」


そして私を見る。


「だから判断した」


私は苦笑した。


「随分長い調査ね」


「当然だ」


監督官も笑う。


「王都の役人を舐めるな」


その言葉に思わず笑ってしまった。

その時、監督官は立ち上がる。

そして扉へ向かう。


「一つだけ教えてやる」


「何?」


監督官は振り返らない。

そのまま言った。


「王都でお前達を評価している人間は思ったより多い」


私は少し驚く。


「え?」


「商会、官僚、軍、色々だ」


そして扉を開けながら続ける。


「だから生き残れ」


静かな声だった。


「お前達が失敗すれば、旧南国出身者全員が馬鹿を見る」


私は言葉を失った。

監督官は振り返らない。

そのまま去って行く。

扉が閉まる。静かな執務室。


私は窓の外を見る。

今まで地下都市だけを見ていた。

でもその向こうには、王都がある。

そして、そこで生きている旧南国出身者達も居るのだろう。


そんな事を初めて考えた。

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