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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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322/359

友の決断

「支援物資輸送完了の報告にあがりました」


私は書類から顔を上げた。


「ありがとう」


そして聞く。


「向こうはどうだった?」


輸送責任者は少し困った顔をした。


「何かと言われると表現に困るのですが……」


「うん」


「緊張感がありました」


私は黙って聞く。


「魔物のせいかと」


「……そう」


短く返す。

だが何か引っ掛かる。

その時、私は聞いた。


「ゆきちゃんに会えた?」


「いえ」


輸送責任者は首を横に振る。


「お姿は見えませんでした」


「そう」


「陣頭指揮を取っているのではないかと」


私は頷いた。

理屈は通るけど、胸騒ぎは消えない。

むしろ強くなる。


「ありがとう」


「はっ」


輸送責任者が退出し、部屋に静寂。

私は窓の外を見る。

そして決めた。


「向こうに顔を出してみるか」


その言葉に文官達が驚く。


「お嬢様?」


「くろがねを用意して」


少し言い直す。


「くろがね……は駄目ね」


監視の目がある。


「馬車で行く」


「今からですか?」


「そう」


即答だった。


「向こうにも連絡を入れておいて」


「解りました」


数時間後、私は馬車へ乗り込み、トンネルを抜けヴァイスベルク領へ。

そして違和感はすぐに見つかった。


「……」


人が少ない。


市場。街道。確かに人は居る。

だが少ない。

その時、警備隊員が敬礼した。


「お待ちしておりました」


「ありがとう」


私は馬車から降りる。


「ゆきちゃんの所へ案内して」


「はっ」


警備隊員は頷いた。


「くろがねを用意しております」


「……え?」


思わず聞き返す。


「こちらへ」


私は案内される。

そこにはくろがね。

堂々と隠される事もなく。

普通に置かれていた。

そうか……こちら側には監査官は、居ないのか。

でも、嫌な予感が更に強くなる。


移動中。私は車窓を眺める。

そして、ある人物を見て止まった。


「……」


背中に見覚えがある。

あれは、38式。間違いない。

それも隠していない。

堂々と警備隊員が携行している。

私は思わず眉をひそめた。


「あれ」


運転手へ聞く。


「警備装備です」


普通に返された。

普通じゃない。

流石にあれら、秘匿していたはずだ。

それなのに何故?


「やっぱり何か変」


小さく呟く。

胸騒ぎが止まらない。

やがて行政区画へ到着。

私は急いで中へ入った。


そして執務室へ案内される。


「こちらです」


扉が開く。

私は足を止めた。

そこにゆきちゃんは居なかった。


代わりに居たのは一人の男性。

見覚えがある。

いつもゆきちゃんの側に居た文官。

私はすぐに聞いた。


「ゆきちゃんは?」


文官は静かに頭を下げた。


「お手紙を預かっております」


嫌な予感。

私は急いで封を切り、そして読み始める。


最初の一文。


「ちょっとー!」


文官が少し困った顔をする。

私は続きを読む。


「いくら何でも早すぎない!?」


手紙の文面は、口調はいつも通り。

だが内容は重い。


読み終えた私は椅子へ座り込んだ。

そして文官から説明を受ける。

一つ。また一つ。聞くたびに状況が見えてくる。


同時に重くなる。私達は今まで巻き込まれない様に準備してきた。


通信。備蓄。避難。村兵。全部その為。

だが目の前で起きている事は、そんな段階ではなかった。


反乱。クーデター。内乱。


どの言葉が正しいのか解らない。

ゆきちゃんは、自ら母親を軟禁した。

そして領都に居る父親も軟禁予定。

表向き。


自らクーデターを起こした様に見せる。


だが本当の目的は違う。

全ての視線。全ての軍。全ての敵意。

それを自分へ集める為。


私は黙って窓の外を見る。


遠くには、兵士達が動いている。


そして理解した。あの異常な支援要請。

あの人の少なさ。あの38式。全部が繋がっていた。


「……馬鹿」


思わず呟く。

文官は何も言わない。

私は手紙を握る。

そして立ち上がった。


「戻るわ」


「はっ。それとこちらで生産していた各種武器、それら弾薬、L6、予備部品の現在の在庫量の資料になります。それと事付けであります。何か足りない物があったら遠慮なく……と」


地下都市へ。


帰らなければならない。

やる事がある沢山。


その日。


私は領都へ戻った。友人が背負おうとしている物の重さを知りながら。

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