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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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異常な要請

「お嬢様!」


朝、執務室へ通信文官が飛び込んで来た。

私は書類から顔を上げる。


「何?」


「ゆき様より物資支援依頼が届いております」


「支援?」


私は少し首を傾げた。

珍しい。ゆきちゃん側から支援を求めて来る事は少ない。


「内容は?」


通信文官は手元の紙を確認する。


「どうやら魔物が現れたようで、討伐準備を行っているとの事です」


「魔物ね」


私は頷く。


それなら理解出来る。

最近は情勢も不安定だ。

大規模討伐になる事もあるだろう。


「なら対応しましょう」


私は軽く答えた。


「支援の内容は?」


その瞬間、通信文官の表情が少し変わった。


「それが……」


「?」


「型は問わず、くろがねトラック型を可能な限り全部」


「……へ?」


私は顔を上げた。

通信文官は続きを読む。


「くろがねは出せるだけ」


「武装装備のロイド、L6も可能な限り」


「こちら側で生産・備蓄している装備品も可能な限り」


「燃料も以上です」


部屋が静かになった。

私は数秒、言葉が出なかった。


「……」


整備文官も固まっている。


「お嬢様?」


「いや」


私は思わず聞き返した。


「魔物討伐よね?」


「報告上は」


「でしょうねぇ……」


どう考えても規模がおかしい。

普通の討伐ではない。

その時、通信文官が続ける。


「詳細確認の問い合わせは行いました」


「返事は?」


「返って来ません」


即答だった。

私は腕を組む。返事が無い、つまり忙しい。

それも相当?


「……」


部屋が静かになる。

私は机の上の地図を見る。


ヴァイスベルク。周辺集落。主要街道。

色々な可能性が頭をよぎる。

だが答えは出ない。


その時、整備文官が小さく聞いた。


「どうされますか?」


私は少し考える。

そして答えた。


「対応する」


「はっ」


「今、隠してある物、要望に応じて全部」


「燃料も出す、部品も出す、整備員も必要なら付ける」


文官達が一斉に動き始める。

その時、私は続けた。


「ただし」


全員が止まる。


「こっちも無理しない程度に」


「……」


皆頷いた。

当然だ。こちらにも守るべき物がある。

全部渡して空になる訳にはいかない。

でも助けを求めている。

それもゆきちゃんが。その意味は重い。


その時、通信文官が静かに言った。


「余程の事なのでしょうか」


私は窓の外を見る。

貨物列車。市場。工場。いつも通りの景色。

でも胸騒ぎがした。


非常に。


「多分ね」


私は小さく呟く。


「ゆきちゃんがここまで言うなら」


一拍。


「余程よ」


その時、ふと気付く。

要請内容に食料が無い。薬品も無い。

求めているのは輸送力、機動力。

武装。燃料。つまり長期戦の準備ではない。


「……」


私は少し眉をひそめた。


「何かを叩くつもりなのかしら」


誰にも聞こえない独り言。

だが妙に嫌な予感がした。

遠くで列車の汽笛が鳴る。


ポォォォォ――


その日。


地下都市では――

大規模な支援準備が始まった。


表向きは魔物討伐。


しかしその要請規模は誰が見ても異常だった。

そしてその異常さこそが、ヴァイスベルクで何かが起きている事を静かに物語っていたのである。

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