届いた支援
数日後――
「お嬢様!」
行政区画。
通信文官が慌ただしく入って来た。
「何?」
私は顔を上げる。
最近、その言葉ばかり言っている気がする。
文官は少し嬉しそうだった。
「到着しました!」
「……?」
「ヴァイスベルクからです!」
私は思わず立ち上がる。
「ああ」
そう言えば来る予定だった。
荷馬車、そして馬。
私は急いで外へ出る。
行政区画前。
そこには長い列が出来ていた。
馬、荷馬車。
そして御者達、思ったより多い。
「……」
私は黙る。
横に居た整備文官も同じだった。
「多くない?」
「多いですね」
予想の倍、いやそれ以上。
その時、先頭の御者が降りてくる。
「ヴァイスベルクより参りました」
「ご苦労様」
私は荷馬車を見る。
一台。二台。三台。四台。まだ続く。
「……」
その時、文官が積荷一覧を持ってくる。
私は見る。そして止まる。
「馬二十頭?」
「はい」
「荷馬車三十台?」
「はい」
「予備部品?」
「はい」
「飼料?」
「はい」
「交換用車輪?」
「はい」
「……」
私は天を仰いだ。
これ、普通の支援じゃない。
その時、整備文官も小声で言う。
「本気ですね」
「本気ね」
かなり本気。
その時、荷馬車の後方から新しい集団が現れた。
私は首を傾げる。
「……あれは?」
御者が答える。
「職人です」
「職人?」
「車輪職人、鍛冶職人、馬具職人、修理担当」
私は思わず固まった。
そこまで送る?
普通、送らない。
その時、積荷の一番上に封筒がある事に気付く。見覚えのある文字。
私は封を開いた。中には短い手紙。
『足りなくなったら困るので送った』
『御者も付けた』
『修理出来ないと意味が無いので職人も送った』
『使い潰して良い』
『返却は後で考える』
『無理はしない事』
「……」
私は苦笑する。
最後、やっぱりそれ。
その時、周囲の文官達も笑う。
「ゆき様らしいですね」
「本当に」
私は手紙を畳む。
そして、再び荷馬車の列を見る。
馬、荷馬車、職人、予備部品、御者と全部。
揃っている。
つまり単なる物資支援じゃない。
輸送能力そのものを送ってきた。
その時、整備文官が言った。
「これでかなり改善します」
「そうね」
監督官の目。
制限された技術。使えない機械。
問題は多い。でも動けない訳じゃない。
やり方を変えれば良い。
その時、遠くで貨物列車が走る。
ポォォォォ――
鉄道。
そして、荷馬車。
地下都市は、少し前の時代へ戻った様な運用を強いられている。
だが止まってはいない。
むしろ対応している。
私は笑った。
「ゆきちゃん」
誰にも聞こえない声。
「本当に助かるわ」
その日。
地下都市には――
ヴァイスベルクから大規模な支援隊が到着した。それは単なる荷馬車や馬ではない。
監視の目によって失われた輸送能力を補う為の。
もう一つの物流網だった。
そしてそれは遠く離れていても変わらない、二人の領主の信頼関係を示す支援でもあったのである。




