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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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暗号通信

「うーむ……」


私は執務室の椅子へ深く座った。

窓の外に貨物列車が走っている。

市場も動いている。

学校も診療所もいつも通り。

表面上は平和。


でも、やりにくい。


「お嬢様?」


通信文官が首を傾げる。

私は机の上の書類を指で叩いた。


「監督官さんがこちら側に靡いているとは言えね」


「はい」


「やっぱり監視の目があると動きにくいわ」


文官達も苦笑した。

事実だった。

最近、各部署の効率が落ちている。


「ロイドは使えない」


「ですね」


「くろがねも使えない」


「ですね」


「結局、荷馬車が頑張ってる」


「非常に頑張ってます」


会議室から少し笑いが漏れる。

本当に荷馬車が過労気味だ。


その時、整備文官が資料を見る。


「工事関係も遅れています」


「通信所建設もね」


「はい」


全部、少しずつ隠しながらやる。

それだけで効率は落ちる。


その時、私はふと思った。


「ゆきちゃんの所も同じかしら」


恐らく。似た状況だろう。

監督官。監視。報告。

どこも忙しいはず。

私は立ち上がった。


「通信室行くわ」


「はい」


地下通信室。

通信士達が忙しく動いている。

私は席へ座った。


「暗号通信を送る」


「了解」


通信士が紙を差し出す。

私は考える。

そして、書き始めた。


『こちらは監視の目がある為、全体的に効率が悪化中』


『特に大型機材運用に支障あり』


『しかし監督官は予想以上に理解を示している』


『そちらの状況はどう?』


私は紙を見る。


「……」


通信士も見る。


「短いですね」


「短い方が良いの」


長文は危険。

簡潔!それが一番。

その時、通信士が暗号化を始める。

歯車が回り、紙が送られる。


カチカチカチ……


私はその音を聞きながら呟いた。


「こんなんでいいかな?」


通信文官が笑う。


「ゆき様なら解ると思います」


「なら良いか」


私は椅子へ寄り掛かった。

返事は恐らく夜、早ければ夕方。


その時、通信士が作業を続けながら言う。


「最近、暗号通信が増えましたね」


「そうね」


戦争の足音。中央の監視。物価上昇。

色々ある。だからこそ情報が大事。

通信網を作った意味が今になって解る。


その時、遠くで列車の汽笛が響いた。


ポォォォォ――


地下都市は、ヴァイスベルクと今はまだ繋がっている。だから備えられる。相談出来る。

動ける。

私は窓の外を見ながら思った。

戦争の流れは止められないかもしれない。


でもだからと言って何もしない理由にはならない。


その日。


地下都市からヴァイスベルクへ――

一本の暗号通信が送られた。

それは単なる近況報告。

しかし同時に、激動の時代を生き抜こうとする二人の領主を繋ぐ、大切な連絡線でもあった。

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