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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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加減という技術

「――さて」


私は机の上の資料を見る。

本物そして、提出用の二種類。


「何だか嫌な作業ねぇ」


思わず本音が出た。

周囲の文官達も苦笑する。


その時、整備文官が確認した。


「どこまで減らします?」


「うーん」


私は考える。

すると、向かい側に座る監督官が即答した。


「半分以下」


「厳しくない?」


「むしろ多い」


即答。

本当に容赦が無い。

その時、副官が頭を抱える。


「監督官殿……」


「公式見解ではない」


「そればかりですね最近」


会議室に、少し笑いが起きた。

通信文官が最初の資料を開く。


「食料備蓄」


「現在二年超」


「提出用は?」


皆、監督官を見る。監督官は一秒で答えた。


「八ヶ月」


「減らし過ぎじゃない?」


「ちょうど良い」


「そう?」


「十分多い」


私は少し笑った。

感覚が違う。


次の項目。


「薬品」


「一年以上」


監督官は、少し考える。


「半年」


「また半分」


「半年あれば優秀だ」


副官が小さく呟く。


「王都基準ですね」


「そうだ」


即答。

整備文官が次の資料を出した。


「通信設備」


「現在」


「地下都市」


「領都」


「各中継所」


「村通信所建設中」


監督官は、資料を見た瞬間、眉をひそめる。


「書くな」


「え?」


「村通信所は書くな」


即答だった。

会議室は、少し静まる。


「何故?」


監督官は真面目な顔。


「王都は通信能力を重視する。小さな村まで早馬を揃えてる所など無い!」


「……」


「早過ぎる情報伝達は警戒される」


誰も反論しない。

実際は、そうだ。

通信網は、行政にも使えるし、軍事にも使える。しかもまだ無線機の存在は知られてもいない。早馬と勘違いしてるし。


私は資料を閉じた。


「鉄道は?」


会議室は、急に静かになる。

皆、監督官を見る。

最近、この人の反応が面白い。

監督官は深く息を吐いた。


「最低限」


「どれくらい?」


「貨物量を書くな」


「えぇ」


「本当に書くな」


即答だった。

副官が小さく呟く。


「監督官殿が一番隠そうとしている気がします」


会議室に笑いが起きる。

監督官も否定しない。

その時、窓の外。


貨物列車が走る。


ポォォォォ――


静かな汽笛。


監督官はそれを見ると小さく言った。


「解るか」


「何が?」


私は聞く。


「王都はな」


一拍。


「貧しい領地には興味を持たん」


「……」


「だが」


列車を、物見櫓を、備蓄資料を見る。


「成功している領地には興味を持つ」


会議室は、静かになった。

その言葉は、妙に重かった。

成功は時に目立つ。目立てば、人が来る。

金を求める者。権力を求める者。

利用しようとする者。様々な者が。

だから隠す。それもまた生き残る為の技術。


私は少し笑った。


「監督官さん」


「何だ」


「思ったより面倒な生き方してきたのね」


監督官は苦笑した。


「王都で生き残るとはそういう事だ」


その返答に会議室から小さな笑いが漏れる。


その日。


地下都市では――

中央への報告書作成が進められていた。

正確に書く技術。

そして目立たないように書く技術。

どちらもまた、混乱の時代を生き抜く為に必要な能力だったのである。

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