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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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意外な助言

「王都が見たら驚くだろうな」


監督官の言葉で、会議室は少し静かになった。

私は肩を竦める。


「別に隠してる訳じゃないし」


「それが問題なんだ」


「……?」


珍しい返答だった。

監督官は資料を机へ置く。


そしてしばらく考える様に沈黙した。


副官も驚いている。何かを迷っている。

そんな感じだった。


やがて監督官は口を開く。


「これは公式見解ではない」


「へぇ」


私は少し興味を持つ。

本当に珍しい。

その時、監督官は真顔で言った。


「備蓄に関しては、全て過小に報告しろ」


会議室は、完全に止まった。


「……は?」


整備文官が固まる。通信文官も固まる。

副官ですら驚いている。

私も流石に予想外だった。


「監督官さん?」


「聞こえなかったか」


「聞こえた」


聞こえたから困っている。

監督官は資料を指差した。


「二年分備蓄」


「うん」


「薬品一年以上」


「うん」


「燃料備蓄」


「うん」


監督官は深く息を吐いた。

そして静かに言う。


「そんな物を王都へ正直に出すな」


「……」


空気が変わる。少しだけ重く。

その時、私は聞いた。


「何故?」


監督官は即答しなかった。

少し考えてから言う。


「北が本格化した場合」


「……」


「中央は必ず物資を探す」


誰も喋らない。解っている。その意味を。


「兵は食べる」


「国軍も食べる」


「避難民も食べる」


「なら」


監督官は資料を叩いた。


「ここが狙われる」


会議室は、静まり返る。

確かに、二年分の食料。大量の薬品。

燃料備蓄。

中央から見れば、巨大な備蓄基地だ。


その時、副官が思わず言った。


「監督官殿」


「何だ」


「それは王都への虚偽報告になります」


正論だった。監督官は頷く。


「そうだ」


そして、続ける。


「だから公式には言っていない」


「……」


「今の話は聞かなかった事にしろ」


副官が頭を抱えた。

私は思わず笑う。

珍しい本当に、今まで監督する側だった男が。


今は、備蓄を守れと言っている。

その時、監督官は窓の外を見る。


市場。学校。診療所。そして人々。


「私はな」


小さく呟く。


「兵站倉庫は見慣れている」


誰も喋らない。


「だが」


一拍。


「住民二年分の備蓄は見た事がない」


静かな声。

でも重かった。

その時、私は少し考える。

そして、小さく笑った。


「じゃあ一年分にする?」


「多い」


即答。


会議室から笑いが漏れる。


「半年分」


「それくらいなら信じる」


「酷い言われようね」


「事実だ」


また笑いが起きた。

でも、皆解っていた。


監督官は地下都市を守ろうとしている。

王都からではなく、戦争から。


その日。


中央監督官アルヴェルトは――

初めて監視者としてではなく、一人の行政官として助言を残した。


それは規則違反すれすれの。

だが、地下都市の未来を案じる者だけが出来る提案だった。

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