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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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待機命令

備蓄倉庫視察も終わり、監督官達も戻った頃。

私は執務室で書類を眺めていた。


「……」


最近、忙しい。

北の状況、備蓄、通信網、避難訓練。

やる事が増え続けている。


その時――バタン!


扉が勢い良く開いた。

私は顔を上げる。

そして、ため息。


「また貴方?」


そこに立っていたのは。

見慣れた怪しい商人だった。


「失礼な」


「怪しいじゃない!今回は真面目な話だ」


「大体いつもそう言う」


商人は気にせず椅子へ座った。

そして珍しく周囲を確認する。


「……」


私は少し表情を変えた。

軽口が無い。つまり、本当に何かある。


「何?」


商人は声を落とした。


「お隣さん」


「うん」


「国軍待機命令が出たらしい」


部屋の中は、静まり返る。

私は数秒。言葉が出なかった。


「……国軍?」


「らしい」


商人も珍しく笑っていない。


「確定?」


「八割方」


嫌な数字だった。

非常に。私は椅子へ深く座る。


「領地軍じゃなくて?」


「国軍」


即答。

つまり話が違う。

今までは、領地軍の増援や応援要請。

そこだった。


でも国軍となれば。


国家が動く。意味が変わる。

その時、通信文官が呟く。


「そこまで行きましたか……」


商人は頷く。


「まだ出撃じゃない」


「待機」


「だが」


一拍。


「待機まで行った」


重い。


その時、私は窓の外を見る。

遠く貨物列車。市場。学校。

いつもと変わらない景色。

でも北では、また一段、階段を上った。

そんな気がした。


その時、商人が続ける。


「それと」


「まだあるの?」


「ある」


嫌な予感しかしない。


「国境周辺、鉄と塩が更に上がった」


私は目を閉じた。


やはり。市場も反応している。

人より先に。軍より先に。

商人達は空気を読む。


その時、商人は真顔で言った。


「まきのお嬢ちゃん」


「何?」


「急いだ方が良いぞ」


軽口無し。冗談無し。

その言葉だけだった。部屋は静かになる。

そして私は思う。


領地軍招集。増援要請。物価上昇。国軍待機。

全部、別々の出来事じゃない。


一つの流れだ。


少しずつ。少しずつ。戦争という階段は、確実に上へ向かっているのだから。

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