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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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同じ知らせ

「――まきちゃんから通信」


地下通信室。

私は椅子へ腰掛けながら言った。

通信士は、すぐに頷く。


「接続します」


ヴゥゥゥ……


低い通信音。

数秒後、聞き慣れた声。


『はいはーい』


少し疲れてる。

多分。私と同じ。


「そっちも来た?」


私は挨拶を飛ばして聞いた。

一瞬の沈黙。そして。


『来た』


やっぱり。

私は額を押さえた。


「領地軍招集?」


『そう』


短い返事。でも十分。

向こうも同じ状況らしい。

私は椅子へ深く座る。


「嫌な流れねぇ」


『本当に』


珍しく、即答だった。

その時、通信の向こう。

紙をめくる音。


『しかもね』


「うん」


『向こうも増やしてる』


私はため息。やっぱりそうなる。


片方が増やす。

相手も増やす。

更に増やす。


止まらない。


最悪の流れ。その時、まきちゃんが言った。


『最初は魔物だったのにね』


私は苦笑した。


「本当よ」


魔物は、倒して終わり本来ならそれだけだった。それだけだった筈なのに今は、領地軍。

増援。招集。国軍。

そんな話になっている。

その時、通信の向こう少し静かになる。


『ゆきちゃん』


「ん?」


『これ、どこかで止まると思う?』


私は少し考えた。

長い。沈黙。

そして正直に答える。


「解らない」


それしか言えなかった。

止まるかもしれない。

止まらないかもしれない。

どちらもあり得る。

今の情報では判断出来ない。

その時、まきちゃんも小さく笑った。


『同じ結論』


やっぱりそうなる。

しばらく二人とも黙る。

通信機の小さな雑音だけが聞こえる。


その後、私は言った。


「でも」


『うん』


「私達がやる事は変わらない」


沈黙し、そして。


『そうね』


静かな返事。

備蓄。通信。訓練。人材育成。結局。

そこ。情勢がどう動こうがやる事は変わらない。


その時、通信士が新しい紙を持って来た。

私は目を通す。

そして少し眉をひそめた。


「まきちゃん」


『何?』


「追加情報」


『嫌な予感』


「同感」


私は報告書を読み上げる。


「国境周辺で物資価格上昇」


通信の向こうは、長い沈黙。


『始まったわね』


私は静かに頷いた。

人が動く。軍が動く。

その次に来るのは、物。

食料。鉄。燃料。全てが動き始める。


「備蓄を急がせる?」


私は聞いた。


『急がせる』


即答。


迷い無し。


『ただし買い占めはしない』


「同意」


そこは変わらない。

市場を壊せば、結局困るのは住民。

意味が無い。通信が終わる頃には、二人とも結論を出していた。

やる事は同じ。慌てない。騒がない。備える。

それだけ、通信終了。


通信終了。


ヴゥゥゥ……


静かになった通信室。

私はしばらく受話器を見つめていた。


「……」


隣にいた通信士も何も言わない。

皆、解っている。

何が起き始めているのか。


その時、通信文官が新しい資料を持って来た。


「お嬢様」


「何?」


「商人達からの報告です」


私は受け取る。

そして目を通す。

内容は予想通りだった。


「鉄価格上昇」


「石炭価格上昇」


「干し肉価格上昇」


「塩もか」


私は小さく呟く。

戦争はまだ始まっていない。

それでも市場は先に反応する。

人より早く。軍より早く。

商人達は空気を読む。


その時、整備文官が言う。


「少し早い気もしますが」


「いいえ」


私は首を横へ振る。


「むしろ早くない」


「――?」


文官達が見る。

私は資料を机へ置いた。


「軍が動けば食料が必要」


「兵が増えれば鉄も必要」


「補給が増えれば馬も必要」


「全部繋がってる」


だから価格は先に動く。

それだけの話。


その時、通信文官が小さく聞いた。


「備蓄量は?」


私は即答する。


「確認しましょう」


「食料、石炭、鉄、薬品、全部」


「了解」


文官達が慌ただしく動き出す。

その様子を見ながら。

私は窓の外を見る。

遠く貨物列車が走っていた。


ポォォォォ――


静かな汽笛。今は平和な音。

でももし本当に戦争になればあの列車は、人を運び、物資を運び。

避難民を運ぶ事になる。

私は小さく呟いた。


「間に合うかしらね」


誰に向けた言葉でもなかった。

だが地下都市はもう動いている。


そして北では戦争という階段をまた一段。上がろうとしていた。

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