表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
306/363

報告

その頃――中央監督官宿舎。


「監督官殿」


副官が一枚の書類を差し出した。


「北方国境地帯の状況報告です」


「……」


アルヴェルトは受け取る。

そして静かに読み始めた。

数分後、ペンを置く。


「悪化しているな」


「はい」


副官も表情が重い。

報告内容は単純だった。

領地軍同士の衝突。双方の増援。

近隣領地への支援要請。

避難民増加。

そして、更なる兵力集結の兆候。


どれも良くない。

その時、アルヴェルトは窓の外を見る。


遠くの地下都市の物見櫓。

市場。学校。平和な景色。

そしてふと、最近見たものを思い出した。


避難訓練。通信演習。指揮官候補生。

村単位の連携。


「……」


副官が不思議そうに見る。


「どうされました?」


アルヴェルトは小さく息を吐いた。


「解った」


「――?」


「何がです?」


アルヴェルトは苦笑する。


「何故あの連中が急いでいたのかだ」


副官は少し考える。

そして同じ答えへ辿り着いた。


「北ですか」


「恐らくな」


避難訓練。通信網。村単位の組織化。

あれは反乱準備ではない。

少なくとも最初の目的は違う。


「戦争への備えか」


アルヴェルトは静かに呟く。

北で火が大きくなれば、難民。物流混乱。

食料不足。治安悪化。

全部が南へ波及する可能性がある。


だから先に備えていた。

そう考えると最近の動きの説明がつく。


その時、副官が小さく言った。


「……先見の明があったのですね」


アルヴェルトは窓の外を見る。

物見櫓の向こう。

静かに動く貨物列車。


「先見の明か」


そして少しだけ苦笑した。


「それとも」


一拍。


「我々が楽観的過ぎたのかもしれん」


副官は何も言わない。言えなかった。

実際、中央は地下都市を警戒していた。


通信網。避難訓練。指揮官育成。

村単位の組織化。


全てを半ば疑いの目で見ていた。

だが今、北から届く報告書を見る限り。


状況は確実に悪化している。


「……」


アルヴェルトは報告書を閉じた。

そして静かに呟く。


「もし北が本格的に燃え上がれば」


「――」


「最初に動けるのは、あの連中かもしれんな」


通信網。鉄道。備蓄。地域連携。

既に準備している。

中央が議論している間にも少しずつ着実に。


その時、遠くで列車の汽笛が響いた。


ポォォォォ――


窓の外。


貨物列車が走っていく。

アルヴェルトはその姿を見ながら思う。

地下都市は戦争を望んでいる訳ではない。

むしろ逆だ。

来るかもしれない混乱に備えている。


その違いをようやく理解し始めていた。


北の火種。


そしてそれを見越して動いていた地下都市。

どちらが正しかったのか。

その答えはそう遠くない未来に示される事になるのかもしれなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ