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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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鉄路という革命

「――次は鉄道区画です」


中央監督官アルヴェルトは案内されながら、ゆっくりと線路を見つめた。


黒い鉄。真っ直ぐ続く軌道。

そして遠くから聞こえてくる蒸気音。


シュゥゥゥ……


やがて貨物列車が姿を現した。


「……」


何度見ても不思議だ。

馬がいない。それなのに大量の荷物を引いている。


その時、整備文官が説明する。


「現在は地下都市とここの窓口となる村を結んでおります」


「そうか」


アルヴェルトは短く答える。


実際、ここへ来る途中、最寄りの村から馬車で移動した。そして並行する鉄道を何度も見た。

その時の感想は、一つしかない。


「速い」


速い。


「この鉄道」


アルヴェルトは呟く。


「蒸気機関と言ったか」


「はい」


「ここへ来る途中も走っていたな」


整備文官は頷く。


「馬車より速かったでしょう?」


「倍以上に見えた」


正直な感想だった。

下手をすれば、それ以上。馬車が数時間掛ける距離。鉄道なら遥かに短い。


その時、アルヴェルトは線路を見る。


「便利な物だ」


そして続ける。


「問題は、このレールとやらが無ければ走れない事か」


「その通りです」


即答。


「線路が無ければ鉄道は動きません」


「……」


便利。だが万能じゃない。

その時、アルヴェルトは考える。

線路。橋。盛土。駅。保守設備と全部が必要。


「設置にも時間が掛かるな」


「かなり」


「維持も必要だろう」


「はい」


整備文官は苦笑する。


「毎日です」


「毎日?」


「線路確認、橋梁確認、車両整備、部品交換、全部必要です」


「……」


馬車と似ている。

便利な分だけ維持も必要。

当然、その時、アルヴェルトはさらに質問する。


「金も掛かるな?」


「掛かります」


即答。


「非常に」


その答えに思わず苦笑した。

正直、見れば解る。

鉄の量。工事規模。人員。

どれも安くない。

その時、遠くで貨物列車が通過する。


ガタン。ゴトン。ガタン。ゴトン。


大量の荷物を積みながら。

力強く、走り続ける。


「……」


アルヴェルトは静かに見る。

その後、整備文官へ聞いた。


「この先は?」


「領都まで延ばす計画です」


「ほう」


「ただ」


整備文官は、苦笑する。


「お金がありません」


「……」


思わず笑った。

妙に現実的。技術があっても。

予算は別。

どこの世界も同じらしい。

その時、アルヴェルトは再び線路を見る。


もしこれが王国内全域へ広がったら。

どうなるか?

領都。港町。鉱山。国境。全部に繋がる。

兵も荷物も情報も。

今とは比較にならない速度で動く。


「……」


背筋が少し寒くなる。

これは単なる乗り物じゃない。

国そのものを変える。仕組みだ。


その時、副官が小さく聞く。


「監督官殿?」


アルヴェルトは静かに答えた。


「便利だ」


一拍。


そして遠くまで続く鉄路を見ながら続ける。


「これを我が王国内へ張り巡らせる事が出来れば」


風が吹く。蒸気が空へ昇る。


「間違いなく革命が起こる」


誰も反論しなかった。


その日。


中央監督官アルヴェルトは初めて理解した。

地下都市が作っているのは単なる便利な機械ではない。

国の形そのものを変える技術なのだと。

文明とは、ただ新しい物を作る事じゃない。


人の移動を変え。物流を変え。

国家の在り方そのものを変えてしまう事。


その力こそが――本当の意味での革命なのだから。

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