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転生エンジニア、隣国の友人と産業革命を始めます  作者:


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302/359

優先すべき敵

王都、中央会議室。

重苦しい空気の中。

机の上には各地から集まった報告書。

そして地下都市視察報告。


行政大臣は静かに立ち上がった。


「――結論から申し上げます」


室内は、静まり返る。


「地下都市及び旧南国地域についてですが」


一拍。


「反乱勢力ではありません」


数名の貴族が顔をしかめた。


「単に効率的な運用を行っているだけです」


「行政、通信、教育、治安維持、どれも機能しております。問題点は少ないと思われます」


その瞬間、一人の高官が口を開く。


「本当にそうなのか?」


空気が少し張るが、行政大臣は落ち着いたまま答えた。


「はい」


そして。


別の報告書を取り出す。


「私が危惧しておりますのは南ではありません」


指で地図を示す。

北方国境地帯。


「北です」


室内の空気が変わった。


「今だに小競り合いが続いております」


「領軍同士の衝突も散発的に発生、住民避難も増加傾向です」


誰も反論しない。事実だからだ。

行政大臣は続ける。


「今、自ら南で敵対行動を取るのは愚策と提案します」


「……」


沈黙。


その後、年配貴族が小さく呟く。


「確かに、北と南。離れ過ぎている」


「はい」


行政大臣は頷く。


「先ずは北を押さえませんと」


その時、軍務省から来ていた武官が口を開いた。


「追加報告があります」


室内の視線が集まる。


「相手側は隣領にも援軍を依頼しているとの噂があります」


「何?」


空気が張り詰めた。


「隣領のみだな?」


「今現在としか申し上げられません」


武官も断言は出来ない。

しかし最悪の場合、更なる拡大もあり得る。

その時、軍務大臣が腕を組む。


「それだと二面作戦は厳しいか……」


誰も否定しなかった。

北で戦力を消耗しながら。

南でも問題を起こす。

最悪の展開。行政大臣は静かに言う。


「ですので南は監督官の配置のみに留めるべきかと」


「……」


「監視は続ける。しかし軍事介入は行わない、戦力は北へ集中」


長い沈黙。

やがて軍務大臣が小さく頷いた。


「合理的だな」


王都の高官達も次々と頷く。

今の問題は、地下都市ではない。


北方国境。


燃え広がりつつある火種だった。

その時、会議室の片隅。

一人の高官が小さく呟く。


「旧南国地域は……放置して良いのか?」


行政大臣は即答した。


「放置ではありません。監督官もおります。定期報告も届いております」


そして少し考えて静かに続けた。


「少なくとも今は」


「敵ではありません」


「……」


その言葉に誰も反論しなかった。

今、中央に必要なのは、新しい敵を作る事ではない。

既に存在している火種を消す事だった。


その日。

王都では――


旧南国地域への対応を監視中心へ切り替え、その間に北方国境問題へ戦力と政治力を集中させる方針が固まりつつあった。


そしてその判断は結果として、旧南国地域全体へ更なる準備と成長の時間を与える事になるのだった。

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