水という基盤
さて。
懐中電灯関連の生産は、順調そのものだった。
簡易型は町に浸透し始めて室内型は商家に広がり豪華型は、貴族の屋敷へ。
便利な物は、放っておいても売れる。
商人は既に各方面へも売り込みをかけているらしい。
報告によれば、ポツポツと大型照明装置の注文も入っているとの事。
舞踏会用。広間用。庭園用。……成る程。
光は見栄にもなる。
私は収支表を見ながら頷いた。
「順調ね」
文官も珍しく笑みを見せる。
「予想以上です」
一つ問題がある。
このまま需要が増え続ければ魔石消費も増える。つまり。充電能力を増やさなければならない。
「水車発電機の増設、必要ね」
私は即決する。
「川沿いに第二、第三基を設置。将来的には集約型も検討」
文官が書き留める。
「承知しました」
エネルギーが増えれば、出来る事も増える。
そこで、私は顎に手を当てた。
次は何を作ろうか?
生活を豊かにする方法。
光は解決した。
次は。……水。井戸から汲み上げる。
重い。往復。冬は辛い。雨の日は泥だらけ。
都市部では、尚更だ。
「電動ポンプは如何?」
思わず口に出る。
文官が首を傾げる。
「でんどう?」
私は立ち上がった。
「井戸から水を汲み上げるのも大変!運ぶのも大変!」
ならば水を、勝手に上げればいい。
魔石動力。水車動力。回転。圧力。水道。
蛇口を捻れば水が出る。
……夢だ。
でも可能だ!水は生活の基盤。
飲料。洗浄。衛生。
そして――城壁防衛時の備蓄。
火災時の消火。
私は机に紙を広げた。
設計開始。井戸底部に設置する吸引ポンプ。
往復運動型。逆止弁。圧力管。
魔石回転機構。
まずは単体井戸向け。
次に、複数戸共有型。
最終的には――簡易水道網。
「……本気ですか?」
文官が呟く。
「もちろん」
私は笑った。光の次は、水。
生活を支配する二大要素。
もし水が安定供給されれば人口は増えるし衛生状態は改善する。
病は減るし労働効率は上がる。
これは単なる便利品ではない。
都市強化だ。
そして都市が強くなれば戦にも強くなる。
私は一瞬、国境の方角を見る。
水は派手さはないが無ければ生きてはいけない。
私は筆を走らせた。
「さてさて、設計しますか」
紙の上に、次々と構造が浮かぶ。
歯車。弁。管。圧力調整機構。
これは、時間がかかるがやる価値はある。
文明は、積み上げるもの。
一足飛びではなく。
確実に光、水。
次は何だろう?私は自然と笑っていた。




