優先順位の変更
「――まき様」
行政区画の朝。
机の上には、鉄材出荷制限。備蓄報告。
輸送量調整。最近、完全に。
“平時とは違う書類”。
「何?」
商業文官は、少し真面目。
「鉄材価格、上昇傾向です」
「でしょうね」
供給を減らした。
当然、市場は反応する。
「ただ」
文官は続ける。
「民間側、一部不満も出始めています」
「……」
私は少し考える。
当然、今まで普通に買えた物。急に減る。
しかも値段上がる。
「でも」
私は静かに言う。
「今は、“売る”より“残す”」
重要。
その時――別文官。
急いで入って来る。
「ゆき様側より追加連絡!!」
「……?」
私は書類を受け取る。
内容確認。数秒後。
「……やっぱりね」
「どうされました?」
「石炭統制」
空気が少し変わる。
「向こうも?」
「ええ」
ゆきちゃん側。工業国家。つまり石炭は生命線。
「民間向け供給量制限開始」
「工業区画優先配分」
「検問強化」
「納品作業明確化」
「……」
完全に。始まってる。
「納品作業明確化?」
若手文官は確認。
「横流し対策でしょうね」
私は普通に答える。
戦時前、一番増える。
「闇流通」
つまり。
「誰に、どれだけ、何処へ運んだか」
そこを厳格化。
「検問も増えるわね」
「はい」
既に主要街道。貨物確認。積荷記録。
強化始まってるらしい。
「……」
私は少し黙る。
北側まだ全面戦争じゃない。
でも国も完全に。
“有事想定”へ入ってる。
「まき様」
整備文官は少し不安そう。
「こちらも燃料制限しますか?」
「する」
私は即答する。
重要。石炭は今や。
* 溶鉱炉
* くろがね
* 発電
* 緊急車両
* 工房
全部に必要。つまり。
「無制限運用、もう無理」
「文官さん」
「はい!!」
「地下都市側も燃料優先順位変更」
「農地、緊急車両、医療、水路維持、この辺最優先」
「了解!!」
更に。
「民間向け石炭販売、一部制限と大量購入監視、検問強化」
「了解!!」
その時、若手文官は少し顔を曇らせる。
「……生活、苦しくなりますね」
「ええ」
私は静かに頷く。
本当はやりたくない。でも。
「平時のままじゃ、生き残れない」
そこまで来てるかも。
その頃。
地下都市周辺街道では既に検問が始まっていた。
「積荷確認!!」
「石炭量記録!!」
「行先は!?」
商人達は少し不満顔。でも皆、何となく察してる。
「……北か」
「戦争になるのかねぇ」
「嫌な空気だ」
市場。静かに変わり始めていた。
その日。
地下都市とゆき側工業地帯では――
石炭を中心とした燃料統制と物流管理強化が、本格的に始まっていた。
文明とは、ただ物を増やす事じゃない。
限られた資源を、何へ優先して使うか。
その選択を迫られた時――国の本当の姿が現れ始めるのだから。




