薬草畑と緊急車両
「――まき様」
第一農業区画の仮設診療所。
最近、怪我人、発熱、軽症診察。
少しずつ増えてきた。
「何?」
衛生文官は資料を抱えている。
「診療所運営ですが」
「うん」
「薬草不足が懸念されています」
「……」
私は少し止まる。
「あー……」
確かに治療を始めた。でも薬が必要。
当然。
「現在は地下都市側備蓄と、採集依存です」
「安定しないわね」
「はい」
特に発熱用、消毒用、止血用。需要が増えてる。つまり。
「栽培必要。文官さん」
「はい!!」
「薬草栽培区画、作る」
「――!」
周囲が少しざわつく。
「農地化ですか?」
「そう」
必要。食料だけじゃない。
「人を治す植物」
それも。
「水路近くへ配置、湿度管理、日照確認ら薬草管理班編成」
「了解!!」
数日後――第一農業区画外周。
新設薬草区画。
「……」
かなり独特。普通の水田と違う。
細かい畝。区画管理。札。種類分け。
「止血草、熱冷まし葉、消毒花」
「……」
私は少し感心する。
「本当に畑になってる」
衛生文官は少し嬉しそう。
「薬師側とも連携しました」
「良いわね」
その時、診療所側、負傷者搬送。
「道開けて下さい!!」
担架で運ばれている。
農作業中、転倒、足負傷。
「……」
私は少し見る。
今、人が増えてる。
「事故も増える」
そしてここは、広い。
「……」
私はふと止まる。
担架、人力が遅い。
「文官さん」
「はい?」
「急患搬送、もっと速く出来ない?」
「……」
周囲は、少し止まる。
その時、整備文官は、ゆっくり言う。
「……くろがね改造します?」
「――!」
私は少し笑う。
「それよ」
来た。くろがねトラックは今、量産安定なら。
「用途拡張」
出来る。
「負傷者搬送型、医療器具積載型」
「――!」
「救急車……」
私は少し遠い目。
前世で普通だった。
でもここには、まだ無い。
「あと」
私は続ける。
「火事対策も必要」
「……!」
建築文官は、即反応。
「集落化で火災リスク増加!」
「そう」
木造が増えてる。
屋台、炊事、つまり。
「燃える、なら」
私は地図を見る。
「くろがね消防型も作る、水槽積載、ポンプ試験、消火班編成」
「了解!!」
空気が一気に変わる。
「完全に町ですね……」
「そうね」
最初は、水が欲しかった。
そこから、農地、学校、診療所。
そして今。
「緊急車両」
そこまで来た。
その時、若手文官は、少し驚いた顔。
「これ、ゆき様側も欲しがるのでは?」
「でしょうね」
向こうも工業地帯、人口増加なら。
「火災も事故も増える」
つまり必要。
「纏めて生産」
「ゆきちゃん側へも送る」
「了解!!」
数日後――
地下都市整備区画。
くろがね改造試験、後部拡張、担架固定、消火水槽、ホース試験。
「おぉ……」
整備員達は、少し興奮。
「本当に、“助ける車”になってる」
「……」
私は試験車を見る。
武器、輸送、農業と色々やってきた。
でも今。
「人を助ける為の車」
そこまで来た。
遠く薬草畑、診療所、学校、水田。
その全てを繋ぐ様に、新しい車両達が動き始めようとしていた。
その日。
地下都市周辺では――
薬草栽培と診療体制強化、そして“救急車”と“消防車”という新たな緊急対応車両の開発が始まっていた。
文明とは、作るだけでは続かない。
怪我を治し。火を消し。
助けを必要とする人の元へ、少しでも早く辿り着く。
そんな“人を守る仕組み”が増えてこそ――町は、本当の意味で安心して暮らせる場所になっていくのだから。




