不穏な報せ
「……お父様から?」
私は文官の表情を見て、すぐに空気の違いを察した。
「はい!」
いつもより硬い声。
「無線で報告が入りました」
私は一瞬、手を止める。
「……無線」
それは通常連絡ではない。
「緊急時のみ使用」
だからこそ――
「只事じゃないわね」
私は椅子から立ち上がった。
「内容は?」
文官がすぐに答える。
「帝政から、不穏な動きあり」
私は眉をひそめる。
「……来たのね」
ついに。そう思った。
「気をつけろ、との事です」
短いが十分すぎる。私は小さく息を吐いた。
「細かい話は?」
文官は頷く。
「聞いております」
私は顎を引く。
「言って」
話を聞き終え。私は静かに窓の外を見た。
「……なるほど」
帝都。権力。情報。こちらの製品。
技術。人口増加。
「そりゃ目立つわよね」
今までがむしろ静かすぎた。
私は苦笑する。
「良い製品」
それは、利益。影響力。価値。
「目をつけられない訳がない」
昔も今も。そこは変わらない。
ここは――この世界の権力者。
貴族。帝都。
「やろうと思えば」
圧力。買収。接収。そして――「暗殺」
私は小さく呟いた。
「……あり得るわね」
冗談ではない。むしろ想定すべき。
私はすぐに顔を上げた。
「警備強化」
文官が即座に姿勢を正す。
「はい!」
「出入りする人間、全確認。身元、荷物、目的、怪しい動きは即報告」
「はっ!」
私はさらに続ける。
「商人も例外なし」
「……承知しました」
「内部も人の配置、見直して」
「了解です」
私は腕を組んだ。
ついに「外」が本格的にこちらを見る。
それだけの場所になった。
嬉しくないが――
「成長した証拠」
私は小さく笑った。
「やる事は同じ」
警戒。準備。先手。私は静かに呟く。
「好きにはさせないわよ」
地下都市は今。
発展の先にある――“権力”という新たな脅威を迎えようとしていた。




