消える在庫
「……順調ね」
私は出荷報告を見ながら、小さく頷いた。
生産量は、問題なし。製造ラインも安定。
人員も慣れてきている。
「いい感じ」
だが――私は次のページを見る。
「……あれ?」
在庫欄は、ほぼゼロ。私は目を細める。
「溜まってない?」
もう一度確認する。間違いではない。
「全部出てるわね……」
作った分がそのまま。即出荷。倉庫に残らない。
「……すごいわね」
需要の強さ。改めて実感する。
私は軽く息を吐いた。
「まあ……」
悪くはない。むしろ理想的。
滞留しない。無駄がない。考え様によっては、在庫回転率、100笑。
「余裕もない」
私は苦笑した。
「まあまあかしら?」
悪くない。だが楽でもない。そんな状態。
外に出と視線の先。荷馬車が並んでいる。
積み込し、出発。到着。また積む。
「フル稼働ね」
人も馬も休む暇がない。
私は腕を組む。
「頑張ってるわね」
物流。今は完全に――ここに依存している。
ふと、私は別の方向を見る。
「鉄道」
敷かれたレール。完成した線路。
開通したばかり。本来なら大量輸送の効率化。
そのはず。私は小さく息を吐く。
「……回せないわね」
物が足りない。余裕がない。
輸送するものが――常にギリギリ。
「カツカツ」
だから。鉄道に回す余裕がない。
今はまだ、荷馬車頼り、私は苦笑する。
「ちょっと勿体ないわね」
せっかくのインフラ。
「時期が早い」
これもまた現実。私は空を見上げる。
「まあ」
いずれ余裕が出る。生産が増える。
在庫ができる。
その時――「鉄道の出番ね」
今はまだ準備段階。
確実にその時は来る。私は小さく笑った。
地下都市は今。
余裕がないまま回り続けながら――次の“効率化”の時を待っていた。




