爆発する需要
「引越しは……任せたわ」
私は軽く手を振って、報告書から視線を外した。現場は回っている。問題はない。
なら――
「丸投げでいいわね」
私は次の書類に手を伸ばす。
「さて」
机の上。別の山の書類。
「商人からの希望商品……」
私は一覧に目を通す。
「……日用品?」
鍋やフライパンに食器。主に、生活雑貨。
「……へぇ」
意外と言えば意外。武器や資材ではない。
「生活寄りね」
需要としては分かる。私はページをめくる。
「鍋、フライパン……」
さらに。
「……ん?」
手が止まる。
「……何これ」
数字が記載されてるが、その数量。
桁が――
「多くない?」
もう一度確認するが、見間違いではない。
私は思わず顔を上げた。
「ちょっと」
文官を見る。
「これ、どういう事?」
文官がすぐに答える。
「はい」
落ち着いた声。だが内容は――
「こちらで生産していた製品ですが、品質が非常に高く、各地から注文が殺到しております」
私は一瞬止まる。
「……は?」
文官は続ける。
「既にかなりの予約注文が入っております」
私は固まった。
「……予約?」
「はい」
当然のように返される。私は頭を抱えた。
「ちょっと待って」
状況を整理する。
品質が良く、評判が広がる。
そして――
「注文が溜まる」
私は小さく呟いた。
「……そういう事か」
需要が先行している。供給が追いついていない。
「不味いわね」
これは機会でもある。
だが同時に――
「逃したら損」
私は即座に立ち上がる。
「スペースは?」
文官が答える。
「武器製造ラインがどきましたので、余裕があります」
私は頷く。
「なら」
答えは一つ。
「やるしかないわね」
需要があるなら供給する。
それだけ。私は指示を出す。
「日用品ラインの設置、優先度は中〜高」
文官が即座に記録する。
「承知しました」
私は続ける。
「沢山作って、一気に吐き出すわよ」
「はい」
私は小さく笑った。
「いいじゃない」
武器や建築資材。だけではない。
「生活でも勝てる」
それが証明された。私は窓の外を見る。
広がる街。動く人。
「これ」
ただの内政じゃない。
「商売になるわね」
私は軽く肩を回した。
「よし」
地下都市は今。
“作る場所”から――“売れる場所”へと変わり始めていた。




