火入れ
「……いよいよね」
私は地下都市の奥、第二溶鉱炉の前に立っていた。
巨大な炉。第一とは比べ物にならない規模。
周囲には人員が配置され、緊張感が漂っている。
「準備は?」
文官が答える。
「問題ありません」
私は頷く。
「ゆきちゃんの所にも連絡は?」
「既に送っております」
「よし」
私は炉を見上げた。
ここから始まる、生産の次の段階。
私は小さく息を吐く。
「火入れ、開始」
指示が飛ぶ。
燃料投入。空気供給。温度上昇。
ゆっくりと――炉が目覚める。
赤く熱を帯びていく。
私はその様子をじっと見つめる。
「……いいわね」
動き出した。これで。
「鉄が増える」
単純だが――大きい。私は少し離れた場所へ移動する。
図面を広げる。
「空間は確保してある」
広い区画。複数。何を作るかはまだ未定。
「後からいくらでも対応できる」
柔軟性。それが重要。
私は小さく頷く。
「正解ね」
「生産内容は?」
文官が確認してくる。
私は即答する。
「まずはレール」
最も需要が高い。最も効果が出る。
「練習も兼ねて」
新人が多い。いきなり複雑なものは無理。
「簡単とは言わないけど」
基礎としては最適。
文官が記録する。
「了解です」
「その間に」
私は続ける。
「お互いの必要物資の整理」
ゆきちゃん側と調整。
何が必要か。どれを優先するか。
「備品の納入も進めて」
工具や部材に消耗品。
すべて揃えないと回らない。
「はい」
文官が忙しく動き出す。
私は再び炉を見る。
炎と熱。動き始めた設備。
人が動き、物が流れ、音が響く。
「……いいわね」
思わず笑みがこぼれる。
第一溶鉱炉だけでは足りなかった。
だが今は違う。
「これで回る」
まだ完全ではないが確実に。
「次の段階」
私は小さく呟く。
「いよいよね」
地下都市は今。
本格的な工業都市へと――踏み出した。




